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□本編
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走って走って、こけて走って。
角を曲がれば寮棟ってとこで、急に声を掛けられた。


「そこの走ってんの!」
「へ、俺?」
「お前以外に誰か居んのか」


兄貴や浅野くらい背が高くて、かちくらい目付きの悪いソイツは、俺を呼び止めると更に目付きを悪くして睨んできた。

なんか用かと聞けば「もう授業だろ」と説教された。
チャイムが鳴ったのはモチロン知ってる。だって教室が嫌で部屋に帰ろうとしてたし。
悪いことしてんのは分かってるけど、同じことしてる奴に言われんのは…納得いかねぇ。
しかも同じサボりなのに、なんでそんな事言われなきゃなんねぇの?
昼休みのことでイライラしてたせいもあって、俺はついソイツを睨み返した。


「よく俺にそんな反抗的な目すんなぁ」
「同じサボりのくせに、てかあんた誰?」
「…俺の事知らないって?」
「知らねー」


たぶん先輩なんだろうけど、俺この学校で知ってる先輩って寮長くらいだし。
会った事ない奴を知ってる方がびっくりだ。
正直に知らないって言ったら、先輩(たぶん)は腹を抱えて笑い出した。


「ははははっ俺を知らないとは、笑える冗談言うじゃねぇか」
「だって知らねーもん」
「おい、同じ冗談は1回しか笑えねぇぞ」
「本当に知らねーんだからしょうがないだろ!」


なんで知らないだけで怒るんだよ?
初めましてなのに知るわけねーじゃんか。
なのに見るから機嫌の悪くなったソイツは、眉間にシワをよせながら急にニヤリと笑いやがった。


「おもしろい」
「いや、おもしろいって顔じゃねーし」
「俺を知らないとか、学ランとか普通じゃないお前が気に入った」
「気に入るなよ、てか普通だし!」
「はっ、たっぷり生徒指導してやるぜ?」


そのままソイツがしゃがんだと思ったら、ひょいと肩に担がれた。
え、何で?


「何すんだよっ! お〜ろ〜せ〜っ」
「暴れんな、指導するって言ったろ」
「ふざけんな!」


いくら暴れても、背中を叩いてもびくともしない。
しかも「流石にこの高さ頭から落ちたらやべぇな」とか言ってくるし。
なんでコイツこんな意地悪なの?
確かにいつもの目線よりすごく高い所にいて、少しビビった。
なんで誰も助けてくれない授業中に会っちゃったんだろ…
今更になって授業をサボった事に後悔した。

なんで授業サボっちゃったんだろ。
なんで廊下走ったんだろ。
こんなことなら、すげー嫌だけど、授業で浅野の後ろに隠れて寝てる方が楽だった。

少しずつ遠くなる廊下の一点を見つめて、俺は小さめにため息をはいた。






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