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□本編
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「って事があったんだけどさーあ、吉岡はどうしたら良いと思う?」
「…話し合い」
「だーって、その話し合う浅野が居ないんじゃんか」
「昼休み、長い」
「そっか昼休みなぁ…」


吉岡に、浅野になんか避けられてる事をグチってみた。
吉岡も直接話した方が良いって言ってくれたから、昼休みに浅野と話が出来るように早速行動。
さっきみたくノートをちぎって、飯食ったら中庭ってメモ書いて、わかるように浅野の机に置いといた。


「吉岡っメモ書いてきた!」
「ん、頑張れ」
「おーさんきゅ!」
「緋なら大丈夫」


吉岡が俺のこと励ましながら、にっと笑った。
いっつも無表情な吉岡が笑ってくれたから、なんだかもう、今なら何でもできる気がする。

チャイムが鳴るのと同時に浅野が帰ってきて席に着いた。
メモ気づいたかな?

先生が来てから俺も席に着いたけど、授業の内容なんか全然頭に入らなくて、浅野と何て話そうかとか考えてたら、あっという間に4限目が終わっちゃった。
チャイムが鳴ったらもう落ち着かなくて、購買にパンを買いに行って、そのままパン片手に直接中庭に向かった。


「あードキドキしてきた」


買ったパンをかじりながら、つい独り言が出る。
すごくいい天気だってのに他に人は居なくて、風でさわさわ木が揺れる音だけが聞こえる。
屋上の次に秘密基地に良いかもしれない。

違うこと考えて気を紛らわしてると、浅野に早く来てもらいたい気持ちと、来てもらいたくない気持ちがぐるぐるしてたのが、だんだんと落ち着いていった。

深呼吸して、木の音を聞いてたら、横からざりっと小石を踏む音が聞こえてそっちを向いた。


「浅野っ?」
「あ、新木くん」
「…今泉か」


足音を聞いて、落ち着いてたのが一気に緊張した。
でも今泉だってわかった途端に張ってた分の気が抜けて大きく息をはいた。
俺がまた落ち着こうとして深呼吸してると、今泉が音をたてないで俺の隣に座った。


「あ、ごめん、俺待ってる人居るから」
「浅野くんの事でしょ」
「えっなんで…」
「彼から伝言、新木くんより大事な用事があるからって」
「…は?」


それってつまり、浅野は来ないって事か?
なんだよ、それならメモ見た時に直接言えば良いじゃんか。

なんか、考えてたこと全部が意味なくなっちゃって、急すぎて頭が整理できなくて、またぐるぐるしてるとポンッと頭に手を置かれて撫でられた。


「なんだよっ触んな」
「なんか可哀相だったから、泣いても良いよ」
「誰が人前で泣くか!」


今泉の俺を見る目が嫌で、手を振り払った。
むかつく。何が可哀相だよ。
今泉に伝言した浅野もむかつく。

隣に今泉が座ってるのが嫌で、浅野が居る教室に戻るのも嫌で。
俺は昼休み終了のチャイムを聞きながら、寮棟に向かって全力疾走した。






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