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□本編
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「新木…聞いてるか?」
「え、あ何? ごめんっ」
「もう飯食いに行くか? って」
ケータイを開けば18:32をデジタル時計が表示してた。
約束よりぜんぜん時間が早いし、腹だって減ってないのに、俺はただ頷くことしか出来なかった。浅野と話してるだけなのに、なんでこんな心臓バクバクしてんだろ。
「こんなに好きなんだけどなぁ…」さっき一回だけ聞いた、浅野のセリフが耳から離れない。
何のことなのか聞けば済む話なのに、なんとなく聞いちゃいけないような、聞きたくないような…でも知りたいような。
後でさりげなく聞けないかな。あーでも行ってないって言っちゃったしなぁ。
盗み聞きした浅野の言葉をぐるぐる考えてたら、何となく昼に考えてた事を思い出した。
―浅野とか吉岡もすきな奴いるのかな?
思い出したらなんでだろう、心臓のバクバクのせいなのか、心臓痛くなってきた。
あれか、4人内緒で話してたから、無意識に怒ってんのか?
よく考えたら心臓じゃなくて腹が痛いのかも。
俺が一人で色々考えてる内に浅野がみんなに連絡とってくれたらしくて、いつの間にか全員集合して飯を食いに向かってた。
「「緋たん、青磁に怒られなかった?」」
「っ! 行ってない!」
「「は? だって呼び行くって…」」
「しぃー!」
思わず双子の口をふさぐ。
こいつらに知られたら、絶対からかわれる。
それに、俺だけじゃなくて浅野も。
俺らの事抜いて4人で話してたってことは、たぶんムカつくけど内緒にしときたいからだ。
つまり双子にバレたら絶対だめ。
聞いちゃった事は俺だけの秘密にしなきゃいけない。
知らないふり。
これが今出来る一番いい方法だと思って、俺はなるべく浅野から双子を離すようにした。
それから飯食って、みんなでダラダラ喋って、夜の8時を過ぎたくらいに部屋に帰る感じになった。
正直、帰りたくない。
だって、浅野の話を知らないふりするのも限界があるし。
それに浅野が知られたくなかったんなら、俺が知っててもだめなんだ。
…でも、なんで知られたくないんだろう。
さらにモヤモヤしたまま、部屋の前まで来てしまった。
「じゃーな青磁、新木、おやすみ」
「ん、おやすみ駈」
「…おやすみ」
隣の部屋の上原も帰っちゃって、当たり前だけど部屋には完全に俺らの2人っきり。
…気まずい。
…沈黙。
とりあえず、しんとした空気に耐えらんなくってベッドにダイブした。
俺、浅野といっつも何話してたっけ?
「あのさぁ新」
「わっ! あ、えっと双子のとこに忘れ物してきた!」
「え?」
「ごめんちょっと行ってくる!」
浅野が何か言おうとして、それにびっくりして思わず部屋を飛び出した。しかも嘘までついて。俺ってサイテーだ。
忘れ物なんて、もちろん嘘なんだけど、行く所もないから双子の部屋まで走るしかなかった。
…浅野ごめん。
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