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□本編
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放課後。
浅野を置いて、双子の部屋にゲームしに来たのはいいんだけど…
3人ってゲームしにくい。

仕方なくコンピューターを入れた4人でやるんだけど、コンピューターは弱くて話になんねぇ。
でも順番で回すと待ってる間がつまんないし、なにより双子相手に俺が敵うはずがなかった。


「緋たん弱いんじゃない?」
「コンピューターが悪いんだっ!」
「またコンピューターのせいにしてー」
「観念して青磁呼んじゃえば?」
「うるさいうるさい!」


浅野が居れば、まぁまぁって間に入ってくれるのに、俺だけじゃ双子に言われっぱなしだし、ずっとからかわれてる。
くっそぉ、悔しい…


「やっぱりゲーム3人じゃつまんないから浅野呼んでくる」
「緋たんやっと1人じゃ敵わないって気付いたの?」
「勉強の邪魔したら怒られちゃうぞー」
「うっせ! 4人の方が楽しいから連れてくんの!」


言い逃げるように部屋を飛び出した後で
「やべーじゃん青磁」
「まぁでも緋も自覚しないとね」
「「さっさとくっつけば良いのにさー」」
なんて双子がやり取りしてたなんて、その時の俺がわかる訳なかった。

双子の部屋を飛び出したは良いけど、勉強してる浅野になんて言ったらゲームしてくれっかな?
もしかしたら本当に邪魔だって言われるかもしれない。まぁ優しい浅野のことだから、怒ることはないと思うけど。

とりあえず、部屋の中の様子を確認してから声をかけることにした。
そっと部屋のドアを開けて、中の様子を覗き込む。
靴が4足あるから、浅野・上原・吉岡・紫音の4人が居るってことが分かる。
4人は本当に勉強してるみたいで、部屋の中は静かだった。いや、静かすぎるか?

もう少し中を見ようとドアを開いたところで、誰かの声が聞こえた。


「あー、こんなに好きなんだけどなぁ…」


開いたタイミングで聞こえた突然の声にびっくりして、慌ててドアを閉めて、来た道のりを走って帰った。
走る必要はなかったと思うのに、足が勝手に動いた。
確かにタイミングが悪くてびっくりしたけど、そんなに逃げるくらいビビる内容だったっけ?
双子の部屋の前まで来て、落ち着こうとドアに手をついて深呼吸してみる。

何回か深呼吸して、あがった息が落ち着いたところでさっき聞こえた声を思い出してみた。
なんだっけ、こんなに好きなのにーみたいな。

誰が、何を?
よく思い出せないけど、内容はそんな感じだったはず。
喋ってた声は…


「…浅野か?」
「なに?」
「うっわぁぁぁぁっ!」
「あーごめん、驚かせるつもりはなかったんだけど」


頭で考えてた浅野の声が急に聞こえたもんだから、さっきより余計にびっくりした。
いや、別にビビったわけじゃない。驚いただけ。
ただここに浅野が居るなんて思ってなかったから…って


「あれ? なんでここに居んの?」
「あ、そうそう、さっき新木部屋に来た?」
「っ…なんで?」
「いや、物音がしたから…」
「い、行ってねぇよ! 今から浅野呼びに行こうと思ってたの!」


とっさに嘘が出た。
嘘つく必要とかどこにもないのに、なんとなく口が勝手に動いた。
あれ? さっきもそんなこと言ったっけ?

自分の行動についていけなくて、俺は浅野の話をこれっぽっちも聞いてなかった。






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