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□本編
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…双子が弄る標的を俺から新木に変えた。
今の話の流れから、鈍いと新木に責めるってことは、もちろん俺の気持ちは双子にバレてるって訳で…

俺そんなに新木のこと好きって表現してるつもりはないんだけどな。
他の3人も、俺がずっと新木に片思いしてることは教えてたけど…新木に対する俺の態度はわかりやすいって言ってたっけ。

これだけ周りが気付いてるのに、当の本人は全く気付かないというのも新木らしいというか、もどかしいというか…
少しだけで良いから、俺の気持ちを知ってほしいとか、俺のことを意識してほしいと思う。
その反面、嫌われるんじゃないか、新木が離れていくんじゃないかと不安な部分もある。


「だから俺ヘタレって言われるんだよな」
「その通りだよ!」
「わっ鈴村!」


さっきまで吉岡と駈と一緒に居たのに、いつの間にか俺の横に並んでいた。
独り言にまさか返事が返ってくるとは思っていなかったので、大袈裟に驚いてしまった。
そんな俺の様子など気にもしていないように、鈴村は言葉を続けた。


「嫌われてないんだからアタックだよ」
「それで嫌われたらどうすんだ?」
「それはその時考えるっ!」
「それじゃあ駄目だろ…」


いい案だと思うんだけどなーと、鈴村は他人事だと思って呑気な事を言ってくる。
俺は真剣に悩んでるってのに…
頭を抱えていると、後ろから声をかけられた。


「俺もちょっとはアピールしてった方が良いと思うけど」
「…駈」
「緋鈍い…俺も賛成」
「吉岡」


でも確かに、何もしなければ何も始まらない、俺が気持ちを形にして伝えなければ、新木は俺の気持ちなんて知るよしもない。

一度ゆっくりと頷けば、じゃあ決まりだね、と鈴村が俺の背中を叩く。駈と吉岡も黙って背中を叩いてくれて、それが少し痛くて、励まされてるんだと実感した。
ヘタレなりにアピール頑張ってみよう。
そういう意味を込めて、ぐっと握り拳を作った。

まだ屋上の隅で双子とじゃれている新木を見つめる、この甘く苦しくなる気持ちが、少しで良いから伝わるように。



極端に鈍い新木の対策を考える為、放課後4人で話し合う事になった。
場所は俺達の部屋…つまり新木を部屋から出す必要があるので、そこは双子に協力してもらう。
新木には双子の部屋でゲームをしてて貰って、その間に話し合い対策を練る。
タイムリミットは晩飯の約束をした7時まで。
それまでに、どうアプローチをしていくかを決める。

放課後、授業が終わると部屋に一度戻り、新木はさっさと着替えて双子の部屋に行く準備をしていた。


「あれ、浅野は行かねぇの?」
「俺はちょっと駈達と勉強するの」
「うへーお前ら本当にいい子ちゃんだな! 勉強なんかじゃなくて、ゲームしようぜゲーム!」
「晩飯終わったら行くよ」


絶対だぞ! と頬を膨らませて部屋を出ていく新木を見送り、それを見計らって駈達を部屋へ呼んだ。
さっきの様子も含めて、新木の俺に対する態度を考察し、対策を練ることになった…


「話を聞く限りじゃ、新木って青磁のことは嫌ってはないよな」
「むしろクラスの中じゃ好きな方だと思うよー? 浅野浅野って懐いてるしね」
「餌付けもしてる…」
「いや、吉岡…別に餌付けしてるわけじゃないんだけど…」


少し話が逸れつつも、とりあえず新木は俺のことを嫌ってはいないと結論が出た。
でも問題は、どうアプローチするかなんだよな…
誰からも良い案が出ないまま、沈黙の時間が過ぎる。


「あー、こんなに好きなんだけどなぁ…」


ふと俺がぽつりと漏らした時に、ドアの向こうからガタガタッと物音が聞こえた。






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