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□本編
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南京錠を開けて、ドアノブに巻き付いてた鎖を外して、ちょっとサビついたドアを押す。
ギギギッと耳に痛い鈍い音をたてて、ドアが開けられると、薄暗い階段にカッと眩しい外の光が入って目が眩んだ。


「まぶしっ」
「おっと…大丈夫か?」
「わり、だいじょぶ」


目が眩んでふらついた俺を、浅野が後ろから支えてくれた。
軽くお礼を言って、まだ少しチカチカする目を擦って、みんなに続いて屋上に出た。

高い所にポツンとある学校だから、回りにここより高い建物がなくて、めちゃくちゃ空が広い。


「すげー! 空でけー!」
「新木、走ると転ぶぞ」


嬉しくて、ついはしゃぐと浅野からストップがかかる。
腕を掴まれた反動で、ぽすっと浅野の胸に倒れてまた支えられた。


「何だよあさの」
「「なぁ、今日から毎日ここで飯食お」」
「賛成! 僕ここ気に入っちゃったぁ」


反抗しようとしたら、タイミング悪く双子の提案とカブった。くそぉ浅野に文句言いそびれた。
でも双子の意見には賛成で、天気が悪くなかったら屋上でこのメンツで昼飯食うことになった!

俺らだけの秘密の場所って、何だかワクワクする。小さい頃憧れてた秘密基地が出来た気分だ。

それからみんなでコンクリートに座りこんで昼飯にした。
浅野が隣で見かけないパンを食ってたから、気になって聞いてみる。


「浅野のそれなに?」
「新商品らしい "ふんわりオムレツパン" おばさんがオススメって」
「いーなー! おばちゃん俺が卵好きなの知ってるくせに浅野ばっかいっつも!」
「一口食べるか?」
「食べる!!!」


差し出されたパンにかじりつくと、予想外に旨かった。パンの中にお弁当のおかずの冷凍オムレツが入ってるみたいな、そんなかんじ。オムレツうま…


「緋…俺のもいる?」
「吉岡もくれんの? いる!」
「見事に餌付けされてるな」
「ご飯食べてる緋って幸せそうだもんね、僕のもいる?」
「いるー!」
「あらきぃぃぃ!」


せっかく紫音もくれるって言ったのに、上原に自分の飯食えって怒られた。
なんだあいつ、最近怒ってばっかだな。
カルシウム足りてねーんじゃねぇの?

俺なんにもしてないのに、上原なんで怒るんだろ?
今だって紫音とちょっと喋っただけだし…


「「もー緋たんは鈍いなぁ」」
「あれ? 俺また喋ってた? ってか緋たんって何だよキモい」
「「独りで喋ってるよー、教えたげるからこっちおいでー」」


こいこいって手招きする双子についてって、広い屋上のすみっこに移動する。
フェンスの下には授業で使うグラウンドが見えた。昼休みだけど誰もいねーや。

ここなら聞こえないかな、って双子がみんなとの距離を確認した。浅野と吉岡はチラチラこっちを気にしてたけど、話は聞こえないくらいの距離はあると思う。
確認が済むと「「じゃあ緋たんにも今後手伝って貰うと思うし、内緒の話、教えてあげる」」って双子が切り出して、こっそり内緒の話をしてくれた。






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