駄文

□プラットホームの君
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ガタンガタン…



3時50分発の電車を図書室から見送る。
帰宅部の生徒は、殆どこの時間に乗って帰っていく。

「さ〜て帰るってばよ。」

机の上に無造作に置かれた鞄を持ち、長い金髪を軽やかに揺らしながら、渦巻ナルトは図書室を後にした。

丘の上に建つ、木の葉高校。
周りに店などは殆ど無く、田んぼばかりの、街から隔離されたような場所にそれはある。
交通手段は、1時間に1本しかないローカル線の電車かバス。その2つのみ。
ナルトは電車を利用しているのだが、人混みが嫌いな為にわざと時間をずらしている。
朝は一本早く、帰りは一本遅く、という毎日。
一本ずらすだけで、人の数は随分違ってくる。
行ってしまったばかりの電車は、次に来るのは約1時間後。
ナルトは咲きはじめた田んぼの脇の小さな花達に目を遣りながら、駅に向かってのんびりと歩みを進めた。



階段を昇ると、人一人いないホームに出る。
ここの駅は無人駅になっており、定期を持たない乗客は切符を車内で購入するか、ホームの隅にある駅名を示す発券機で券を取り、下車した駅で精算する形をとっていた。

誰もいないホームは静まり返り、時折通り過ぎる車のエンジン音が聞こえるだけだ。

「のどかだってばよ〜。」

呟きながら椅子が3つ連なったベンチに腰掛けると、鞄を探りポッキーを取り出した。
あとまだ30分以上あるのだから、一箱ぐらい平気だろうと封を開け、ポリポリと食べはじめる。
口に広がるチョコの味を堪能していたが、向かいのホームの先頭車輌が止まる位置に人が立っているのが見え、視線を移す。

「あ、またあの人だ…。」

ナルトが通う高校とは別にもうひとつ、少し離れたこれまた丘の上に高校が存在する。
沢山の偉人を輩出している進学校、暁学園。
その学校の制服を着た男子生徒が、気付けばいつもそこに立ち、本を読んでいたのだった。
黒髪の長身で中々の顔立ちの彼は、木の葉高校、暁学園両校の女生徒達の憧れの的で。
一ヶ月前にあった入学式の翌日、女生徒に囲まれ黒山の人だかり状態になっているのを目撃し、少しばかり同情してしまった。
でも登校時に、「サスケ!」と叫び首にしがみつく黒ぶち眼鏡を掛けた女の子を見かけた事があるので、彼女持ちだということは解った。

「どーでもいいけど、サスケっていう名前だって事も同時に知っちゃったけどね。」

多分彼も、人を避けようとして時間をずらしているのだろうと思うのだが…

「何で彼女と一緒じゃないんだってばよ?」

ポッキーの残り最後の一本を口にくわえたまま、横目で彼を見る。
やっぱり見た目通り、冷たい人間なのだろうか。

「…って何で人間ウオッチングしてんだってばよ。馬鹿みたい。」

自分も他人からジロジロと見られたり、話のネタにされるのは嫌いだ。
そんな人間になるつもりは更々無いので、それ以上彼の事であれこれ考えるのは止めることにした。
人の事情などはどうでもいい。
私は私だ。

「…あ〜あ。早く電車来ないかな。」

いつもなら時間はあまり気にならないのに、何故だか今日はひどく待ち遠しく感じた。
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