拍手お礼
□塾講パロ(トレスver)
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しばらく考えた後、やはり分からないなと呟いた時の表情がなんだか可愛かったから、不機嫌になってたことも忘れて笑ってしまった。
「私はそんな優しくないトレス先生のこと、ちょっと好きですよ」
優しかったらもっともっと好きです。付け足せば、先生は目を伏せて、そうかと言っただけだった。ちょっとくらい、動揺したっていいのに。
静かに、また名が呼ばれる。その声がさっきよりもずっと、優しく柔らかなものになっていることに気付く。
「確証もない、ただの気休めを口にするのは無理だ」
「はい」
「不安なのは十分わかる。だが、慰めだとかそういったものを求められても俺にはできない。それでも、お前が今までずっと頑張ってきたことも、誰よりもよく知っている」
そこまで言って、言葉を区切った先生は大して表情を変えることなく急に手を伸ばしたかと思うと、わしゃわしゃと少し乱暴なくらいの力強さで頭を撫でた。
「俺はそれを信じてる。だから、お前も信じろ」
そうして小さく、本当に小さく浮かべられた微笑みに、胸を占めていた雪が一瞬にして溶かされていく。
はい、と頷いたはずの声は間抜けにも掠れていて、やはり先生の呆れたような、それでも優しげな苦笑を買ってしまった。
「そういう風に笑ってたら、女の子にもモテますよ」
「お前の発言はいつも理解できないな。下らないこと言ってないで、次の問題に取りかかったらどうだ」
素っ気なく返された言葉はもういつも通りの、色も何もない無愛想なものだったけれど、何故だかそのいつもの様子にほっとしている自分がいた。