BOOKA

□Dear Friend
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サン誕2009





あいつとはただの友達だ。

同じ中学を卒業して、同じ高校に入学した。
親友ほど仲良くなければ、クラスメイトの一人ってわけでもない。
仲間と一緒に昼飯食ったり遊びに出かけたり、そんな『友達』だ。
なのに、帰り際、あいつと別れがたいと思うことが、ここ最近続いている。
もっと一緒にいたい。
仲間数人と、じゃなくて。
あいつと2人きりで。



「別にいいぜ」
ゾロがさらりと何でもないふうに答えたので、サンジは思わず目を丸くした。
「え」
「だから、別に行ってもいい」

みたい映画があってさ。
それ、俺も気になってた。
へえ、あ、じゃあ今度の日曜、一緒に行くか?つってもナイトだしなあ。
別にいいぜ。

「や、だってお前、門限あるだろ?」
「それは中学ん時までだ」
ゾロはなぜだか偉そうにふんぞり返ってそう言った。
たしかに、中学までは門限7時だからと言って、遊んでいる最中に帰っていた。
ゾロは休みもほとんど部活に費やしていたから、遊ぶ機会なんて滅多になかったけれど。
「つーか夜遊びって、お前ん家の親、許してくれんの?」
ゾロの家は厳しい。
門限もそうだし、ファーストフードは月一回、携帯も持たせてもらえない。
「なんとかなる」
自信満々に言ったゾロは、そのあと、付け加えるようにサンジを見た。

「だって次の日、お前の誕生日だろ?」

サンジは思わずゾロを見つめてしまった。
知らなかったのだ、ゾロがまさか、自分の誕生日を知っていたことを。
日付は言わなかったはずだ。
サンジはただ『次の日曜』と言っただけなのに。
それなのにゾロは、『次の日が誕生日だろ』と。
まるで、カレンダーに印でもつけていたかのような正確さで。

それから、思い出したように『てゆうか、誕生日なのに俺と遊んでいいのか』と言った。
サンジが答えられずにいると、あれ?という感じで首を傾げる。
「お前、彼女いなかったっけ」
「……夏に別れた」
「あー、そうだったな」
動けずにいるサンジの前で、ゾロは、笑うわけでもなく飄々とした態度だ。
そんなゾロに、冗談すら出てこない。
「それじゃ、さみしい友達のさみしい誕生日を祝ってやるよ」
なんて、さわやかな笑顔で言うものだから、サンジは思わずゾロに飛びつきそうになった。



ゾロとはただの友達だ。
それなのに、離れがたいと思う気持ちはますます強くなっていく。

笑顔が見たい。
話しかけてほしい。
俺を見てほしい。
近くにいたい。
2人で、いたい。
伝えるつもりのない気持ち。

ゾロの笑顔は、『もしかしたらお前も』と、勘違いしてしまいそうで怖かった。



サンジの机の卓上カレンダー。
3月2日にささやかながらハートマークがつけられたのは秘密だ。


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