BOOK@

□そげキング
1ページ/1ページ

「いいぞ、暴れても」
そう言って、ルフィがほんの少しだけ嬉しそうな顔をした。
わかっている。
ようやく道が開けた今、暴れたいのは他ならぬルフィなのだ。
だからゾロは焦った。
「ルフィ!無茶いうな!俺たちが追いつくまで待たせろ!」
女だから助けるとか、そういったフェミニストぶる余裕なんて今サンジにはないはずだ。
仲間がそこにいる、ただそれだけ。
ウソップは無事なのだから、わざわざ危険を侵すことはないのに、サンジは絶対無茶をするに決まっている。
ルフィの言葉は火に油を注いでしまうだけだ。
「おいコック聞こえるか!その列車にはヤベェ奴らが」
「いいって、ゾロ」
ゾロの言葉を遮ったのは、ルフィの落ち着いた声だった。
ゾロは言葉につまる。
冷静な船長の声。
あんな馬鹿げた行動や発言をするとは思えない、核心をつく声。
「お前ならどうした」
床に座り込むルフィの、意志の光る両目が見上げてくる。
ああ、とゾロは思う。
「止めたってムダだ」
――ルフィは何もかもわかっているのだ。
クルー一人一人の性格も、皆が置かれている状況も、サンジが次に起こすだろう行動も。
そこに理解がともなっているかは疑問だが。
『…わかってんなァ』
サンジの、機械越しの声がした。
久しぶりに聞く声は、遠いくせにハッキリと耳に届く。
誰よりも早く、先を見据えて海列車に乗り込んだサンジ。
たかだか数時間、離れていただけなのに。
いろんなことが起こりすぎて、懐かしさすら感じるのは何故だ。
『おうマリモ君、俺を心配してくれんのかい?』
「するかバカ」
こんな状況をまるで楽しむかのようなサンジのセリフに、少しだけ気持ちが落ち着いた。
本当は心配で心配で、今すぐにでも飛んでいきたいくらいだ。
――そんなこと、死んでも言えない。
だから、死なない。
死ねない。

早く早く早く。
荒れ狂う波を越えて、早く仲間の元へ。
サンジの元へ。
ウソップの元へ。
ロビンの元へ。

END

▼Comment
UP:2005.6.8
一ヵ月ぶりのSS更新…
ジャンプに萌えたので。
ネタバレですが、あまりに久々のサンゾロっぷりに脳みそがイカレました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ