BOOK@

□ゆき
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雪が降っている。
ふわふわと、鳥の羽根のような薄灰色の雪。
船は甲板をそれで埋めつくし、雪よりも濃い灰色の空と黒い海を進んでいる。
見上げれば吸い込まれそうな空に足元がふらついて、サンジはスコップを下ろした。
服に降った雪を払い落とし、体温で溶けた髪の雫を指で弾き、もう一度空を見上げる。
(ゴミみてぇ)

はたして雪は本当に白いのか。
足元に降り積もった雪は確かに白く、しかし舞い落ちる羽根は灰色でほこりのようだ。

寒さはすでにサンジを取り巻いていたが、額にはうっすらと汗をかいている。
(この汗も雪になんのかね)
そして、雨でも嵐でもどんな時でも、一度寝たらなかなか起きない剣士を思う。
(あいつの汗が雪になったらすげぇことになりそう)
ナミはきっと女部屋に閉じこもって出てこないだろう。
実際この普通の雪でも出てこないのだから。

雪はやみそうにない。

さっきよりも大きくなった灰色の羽根に、てのひらを上に向けた。
手袋に落ちてくる雪をじっと見つめていると、ほのかに青が見える。
青、というよりは薄い碧に近い色を結晶の間から覗かせるそれは、あの剣士の瞳にそっくりで。

サンジは舞い降りる冷たい鳥の羽根に、そっと口付ける。
小さな音を立てて、その牡丹雪は手の中で溶けた。

END

▼Comment
UP:2002.11.8
どれだけ汗をかいても雪になりませんから!
雪かきサンジ兄さん。
片思いらしいです。

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