BOOK@

□愛してる
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生まれて初めて言われたその言葉が、忘れられないんだ。
「愛してる」
ぼやけた頭で、その言葉だけが鮮明に聞こえて、夢と現実の境がわからなくなった。

目が覚めたら、体中が重くてだるかった。
光に透けたカーテンが眩しくて、寝返りを打つようにそこから顔をそむけたら。
抱きついたまま、サンジが眠っていた。
触れた肌がなめらかで気持ちいい。
白い顔にかかる金髪が、すごくきれいだったのを覚えてる。
その顔を見ていたら昨日のことが一気に思い出されて、ゾロはシーツに潜り込んだ。

ぐっすり寝てるから、真っ赤な顔は見られないと思ったけど。
やっぱり恥ずかしくて、ゾロはシーツからこっそり目だけを覗かせてサンジを見た。
短い顎ひげが見えて、その上に薄い唇があった。

この口があの言葉を言ったんだと思ったら、顔が熱くなった。
この唇が自分にキスをしたんだと思ったら、嬉しくなった。

なぜだろう。
キスしてほしい。
セックスもキスも、初めてだったくせに。
今は、キスがほしい、と思うのは。

そっと手を伸ばしてサンジの顎に触れる。
ひけがちくりと指に刺さって気持ちいい。
その指が震えていて、女みたいだと笑う。
セックスした次の日って、こんな穏やかな気分になるのか。
悪くない、とゾロは思った。

伸ばした指が、唇に当たった。
震えてるせいで力加減がうまくできずに結構強く当たったのに、サンジはまだ目を閉じている。
(あったけェ…)
ぼんやりしていたら、急にサンジが覆いかぶさるようにがばっと起き上がった。
「う、ぉっ!」
顔の横に手をついて、腰をまたいで。
「キス、してくれんのかと思ったんだけど」
してくんないの?
そう言ってサンジは、いたずらっ子のような笑みを深くした。
「っ!…いつから起きてやがった」
「ゾロがシーツにもぐったぐらいから」
「ずいぶん前だな…」
視線が、なめらかに動くサンジの唇から離れない。
「してくんないの?」
「〜〜っ!」
できるわけない。
恥ずかしい。
今更、だろうけど、そんなの無理だ。
「ま、いっか」
そう言ったサンジの顔がおりてきて。
「……ん」
思わず目を閉じた。

なぜだろう。
キスだけで、嬉しいなんて。
セックスもキスも初めてだったくせに。
今は、キスが嬉しい、と思うのは。

それはサンジとするキスだから。
「愛してるよ、ゾロ」
生まれて初めて言われたサンジの言葉が、忘れられないんだ。

「サンジ、腹減った」
「…お前は色気よりも食い気だな」
いつも決まって空腹感で目が覚める。

END

▼Comment
UP:2003.3.25
壱尋さま13000HITリク「LSの9月と10月の間の甘口エピソード」です。
これが、アンケ投票ダントツの一位でした。
アンケに投票くださったみなさま、ありがとうございました!

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