PEACE MAKER 鐵
─新選組の場合─
朝は何かと忙しい。
前川邸の門の前を軽く掃除して、隊士の皆さんに朝食を作って、やたらと量の多い洗濯をして、廊下や部屋の掃除をして、あぁ、それからそれから…
「あ、あゆ姉は…これを一人でやっていたのかしら…」
何となく一通りこなせたかなぁ、と土間に程近い廊下で倒れこむように休憩していると、ちょうどよくススム君と鉄之助君が通りかかった。
彼らを捕まえて疑問をぶつければ、少し考えてからススム君は口を動かす。
「…いや、最初の頃は隊士の方々が手伝ってくれてたさかい、全部やあらへんで」
「最初という事は、途中からは一人だったのね」
「途中からは…ほれ、副長の小姓であるそこの犬っころが」
「誰が犬っころだ!」
「ちょっと鉄之助君は黙っててよ。 それにしても、あゆ姉も全部はやってなかったのか…」
ごろりと転げた私を覗きこむように屈んだ鉄之助君とススム君。
どんなに頑張っても、満足に出来ないハズだわ。
そう独りごちれば、二人は浅く息を吐いてから私を挟むように両側に座った。
「あんなぁ、姉貴ん頃より隊士増えてんねやで」
「え、そんなに増えてる?」
「あと、俺らの仕事とかも増えてて、あゆ姉の頃より手伝えてねぇじゃん」
「そ、そういえばそうだわ…」
反動をつけて起き上がれば、視界に入るのはさっき干した敷布だ。
遠くの方から、子供が遊ぶ声が聞こえる。
ひどく長閑な空間に、ちょっと心が落ち着いた。
新選組の朝。
「まぁ、お前はお前で、頑張っとんのちゃう?」
「そうだよ、姉ちゃんにはすげぇ支えられてると思うよ!これからは俺も、もうちょい手伝うようにするからな」
「…ん、ありがと、二人とも」
両側からかけられる優しい言葉になんだか泣きそうになったのは、内緒だ。
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