ブラックアウト
□第二章
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「なぁなぁ、俺…あいつとタッグ組むなんざ、まぢありえねぇんだけど…。てかやってけるのか、仕事になるのか??」
外はもう日が暮れ始めていた。此処にいると外なんて全く見えないので、時間というのを忘れてしまう。
所長はふらーっと外に出ていき、彼方と令はこれから彼方が生活する部屋の片付けをしている。
そういうことで、お互い同じ空気を共有したくもないのだが、ただ今、この談話室(ソファーのある部屋)には葵と鈴この2人だけ。
さっきとはまるで違い、2人とも静かな面持ちでソファーに腰をかけていた。
「そんなの知らないわよ。でも案外あなたより彼方君の方が一枚上手かもね。」
鈴は熱々のコーヒーを口に運ばせながら、さらっと毒を吐いた。
葵は眉をしかめると、
「どういうことですか?」
とわざと棒読みをする。
まさにこの2人は、犬猿の仲という言葉が相応しい。
「私が調べたところによると、戦争に出ていて、そこでの成績がかなり優秀だったらしいわ。…て言っても、国に探りをいれるみたいなもんだから難しくて、これくらいしか知らないんだけどね。」
「…ふーん。……国のために戦った次は、とある街の殺し屋ってか…。ご苦労なこった。」
葵は少し悲しい表情を浮かべると、それをごまかそうとコーヒーを飲んだ。ところが、これが想った以上に熱いもので、あちーっと悲痛な叫びを漏らし、冷まそうと舌を出した。
明らか、それを馬鹿にするような目で見つめる鈴。
葵は何もなかったことにしようと慌てて話を切り出す。
「お、お前があいつをスカウトしたって聞いたぞ。戦争に出てる奴なんかさ、そこらじゅうにいるのに何であいつなんだ?」
目の色を変えないまま葵を見つめていると、顔がだんだんと引き攣り出してきだした。
「私がもし別の兵役時代がある人を連れて来たって同じことが言えるでしょ?そんなこと聞いても埒があかないと想うんだけど……。」
「…んー、何かあいつ違うんだよな。……でも、ま、言われてみれば、そっか。」
少し疑いを抱きつつも、あっさり納得した葵に、
「そんなことより。」
と言って、鈴は資料らしき紙の束を雑に渡した。
鈴の態度に当然腹を立てた葵だが、声はあげずに舌打ちをした。
そして、机に鈴に投げ捨てられた資料を適当にかき集めて、軽く目を通し始めた。
彼方が見学に行く予定の仕事のターゲットや依頼人のこと、殺害までの順序までもが事細かくパソコンの字で書かれている。
葵は目配せすると、鈴がそれに反応し説明を始まった。
「依頼人は房井高雄、16歳……」