ブラックアウト

□プロローグ
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週末なので明日から人々は休みになるだろう。
そのためか休日前のこの下町の大通りはいつも騒がしい。


夕方なのにたらふく酒を呑んで酔い潰れている親父達で溢れかえっている。
見ているだけで暑苦しく、悪臭を放っているようにみえるのに、ぶつかって来られるときたらもう身を投げ出したいくらいだ。

ただえさえ祭みたいに人口密度の高い通りなのに、そんな所でふらふらしないで頂きたい、というのが此処にいる皆の願いだろう。



新鮮な空気を求め、ふと空を見上げれば、空中をスカイライン(ロープウェイみたいなものである)、そのさらに上には背の高すぎる高層ビルが天を目指すかのようにそびえ立ち、人々を覆い囲む。
人という存在がちっちゃく感じてしまう程。

新鮮な空気どころではない。




この国の中心には、あのでかいビルさえも余裕で越える政府の塔がある。
そして、その下に裕福な者が住まう貴族街があり、それを囲んで一般人が生活している下町。

一般人といっても貴族とは比べものにならない程の貧富の差がひらいているのが現状。
そのため階級を分ける制度までもが存在し、これによって下町の者は貴族街に入ることすら許されないのだ。
一歩も下町から外に出ないまま生涯を終える人だってそう少なくはない。




「キャァァ!!」

人群れの中から女の叫び声が聞こえた。
どうせまた痴漢かスリのどちらかだろう。全く警察は何を仕事としているのだろうか?
治安が悪過ぎて警察が寄り付かない地域だってあるくらいだ。


昔はこの国の宗教サンセベリア教の唱え、「意を持って、国に尽くす」、に忠実に誠意を見せてきたものだったが、ここ近年国民は国の信頼を失い、絶望感を抱いている。

もう国の機関なんて無力と言っても過言ではない。


荒れた国民はどんどん犯罪を犯していく。
それに対して、戦争のことばかり視点がいき、基本的なことは忘れて何の対処も施そうとしない国。

悪い連鎖が繰り返されていくだけ。
そんなことくらい、そこいらの幼稚園児でも分かる簡単な問題だったりする。

そして、この国は立派な犯罪大国となってしまったのだった。どんなに重い罪が一般道で起きたって普通のことなのだ。



そして、とうとう法律に一般人の武器所持が認められてしまったのである。(シプリペディウム帝国憲法 1041条より)

ついに政府は自分の身は自分で守れという無責任な法律を国民に突き付けたのであった。
 
 
 
 

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