01/10の日記

17:48
吸血騎士】AM00:00【零優+藍
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AM00:00


※時間軸やわいです。



 近頃見る夢は過去の再生がほとんどだ。

 あんまり繰り返し見るものだから、夢についた途端、そうだと分かるほどにまで。

 それは幼い頃の他愛の無い記憶から、どうしようもなかった別離まで、様々。

 共通しているのは、眠りから覚める寸前、必ずあいつが、優姫が、悲しそうに目を伏せることだった。


 ウルサイ

 タノムカラ、オレカラデテイッテクレ


 優しい記憶は俺を容赦なく叩きのめして、それで後には悔いが残るだけ。

 は、と目を覚ましたとき、頭を撫でる手が無いことに絶望して、それすらももう慣れた。


 午前 零 時


 吸血鬼を殺したくて殺したくてたまらなくて、いつもどおり通りに出る。

 血液錠剤をざらざらと口の中に放り込んで、少しだけ、飢えを満たした。


「……違うか」


 決して満たされない渇きの訳は知っている。

 だが、認めたくない。


 ガウン、ガウン、ガウン……


 血薔薇の銃を連射する。

 レベルEと化したソレはその場で灰燼となって消えた。


 満ちない足りない、欲しい。

 何を?

 吸血鬼の屍を。

 違う。

 俺が、欲しいのは


 ―――俺は、お前だけの血が欲しかったよ…


 変わっていない。

 目を瞑れば鮮明に浮かび上がる、温もり、質感……血の味。

 吸血鬼を根絶やしにしたいという願い。

 あいつから切り離せない心。


 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。


 俺は………




「………あ」

「………藍堂センパイ。どうしてここに」


 路地裏から感じた気配に振り返ると、馴染みの吸血鬼が顔を出した。

 藍堂英。

 あいつの、教育係。


「枢様のお使いの帰りだ。言っとくけど、今のレベルEとは一切合財関係ない」

「分かってますよ。あなたも玖蘭枢もこんな小物を差し向けるほど暇じゃないでしょう」


 血薔薇の銃をしまい、向き合う。

 ピリ、と空気が震えた。


「……黒主優姫は元気だよ。空回りに、愚直に、装ってる」

「玖蘭です」

「……お前は、どうしてそんなに」

「純血種は全部俺が殺す。それがあいつを灰燼に帰すことになっても」


 ―――嘘つきだね、君は。

    今でも彼女を愛してるくせに。彼女の血が欲しくてたまらないくせに。

    銃爪、引けるの? 名残惜しく彼女を抱きしめたその手、その腕で?


 玖蘭枢のそんな嘲笑を聞いた気がした。

 忌々しい。全て見透かされている。


「でなければ、あいつと別れた意味がない」

「……そうか。

 じゃあ、一つだけ教えてやるよ」

「何」

「優姫様が、枢様の血で満たされることは無い。心の全てが枢様に向かってないからだ。

 ………どういう意味か、分かっているな」

「それを、俺に話してどうしろと。そんなに俺が玖蘭枢を殺す理由を増やしたいなら話は別ですけど。

 俺が、あいつの事を好きだとか言うのを、期待しましたか」

「いつに無く饒舌だよ錐生。

 ………馬鹿だ、お前ら、両方とも」


 藍堂センパイは後は何も言わずに立ち去った。

 あいつの名前が出た瞬間に粟立った肌を抑えて、最早灰すら消えた通りをぼうっと見つめる。


「馬鹿でもなけりゃ、こんなこと、出来ないんですよ、藍堂センパイ」


 こんな、不毛な掛け合い。




 血薔薇の銃を腰から抜いて、新たな敵を探して彷徨い歩く。

 
 衝動は、粟立つ肌は、到底収まりそうに無かった。






▼自分に嘘

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