稲妻1

□星降る夜、あるいは水底に
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星降る夜、あるいは水底に



 凍てつく闇を輝く光へ。

 紅蓮の炎は燃え盛る劫火に。

 追いつき、追い越し、届かぬ高みへ。雷門イレブンは私たちに屈さない。

 負けたのは、私達。それは私たちが己の力を過信した結果か否か。

 足元は深い深い―――…水底


「負けたまま強がって、大したことの無いフリをすることは愚かだ。

 かつてジェネシスの座を争い、そして私が始めに蹴落とされた。私の不甲斐なさと今なら言い切れるが―――…。

 だが二度とあんな惨めで愚かな私になどなりたくは無い。今諦めれば、正に二の舞だ。

 それは君とて同じだね、バーン?」

「一々話がまだるっこしいんだよお前は。何が言いたいんだ、わざわざ俺の部屋まで来て」


 わかってるくせに。君は私よりも賢いよ、晴矢。


 そういえば、彼は僅かに眉を寄せ、それから時間を置いてゆっくりと告げた。

 俺はもう晴矢じゃない、と。

 そうだね、私だって風介ではいられない。だけどガゼルというレールを真っ直ぐ進むことは出来ない脆弱者。

 私は、誰? 風介でもガゼルでもないなら、今の私の存在意義は何?


「このまま終わりたくない」


 渦巻く焦燥を胸に押し込んで、静かにそう零した。

 晴矢は……バーンは目を見開き私をまじまじと見つめ、そして小さく笑みを浮かべる。

 今まで一度だって見たことの無かった、綺麗で儚い、笑みを。


「バーン、無理を承知で君に協力を要請したい。

 私はこのままやられっぱなしでいるのは嫌だ。だけど、ダイヤモンドダストはもう時間が無い。

 ……君がもし、私と同じ気持ちを持っているのなら」


 視線を落とし、足元の感じる水音を聞いた。

 それから低い天井を見上げ、その先にあるであろう遥か遠くの星を思う。


 一度でいい。星になりたい。何よりも光り輝いて。果てが超新星爆発で無に帰しても構わないから。


「バーン、君と、最強のチームを作りたいんだ」


 今度こそ彼は目だけでなく口すらも開いて、震える手で私の両肩を叩いた。

 目瞬き、復唱、それからようやくその表情を戻す。


「酷い馬鹿面だったね」

「うるせぇ。………本気か、ガゼル」


 確認するように覗き込まれる。黄金色の瞳が揺れていた。

 張り詰めた空気の中で、互いの吐息の温度だけが緊張を解していく。


 近いなぁ


 そう思って、何だか無性に彼に触れたくなって、彼の頬に手を当て咬み付くようなキスをした。

 黄金の瞳がギュッと閉じられる。少しだけ舌を絡めて反応を見た。抵抗なんて、無かった。

 唇を離すと、肩で息をしながら彼は私をにらみつけた。


「お前、なぁ……!」

「不用心な君が悪いよ、バーン。

 それから、さっきの言葉も本気。是非、お願いしたいね」


 今日はこのくらいにして置くよ。そう言って部屋から出るべくセンサーに手を翳す。

 その直前で。


「どうして、俺なんだ?」


 呟く声を聞いた。

 振り返って肩をすくめ、彼の元へともう一度だけ踏み出す。


「君となら、私は私として此処に在り続ける事を許される気がするんだよ」


 それからそっと耳元で囁いた。


「君と共に戦いたい。私は多分、君の事が好きだから」


 明らかに吃驚した彼の頬にキスをして、今度こそ部屋を出る。

 ごめんね、と声には出さず、唇を動かした。



 利用してごめん。

 好きなんて言ってごめん。

 でも君がいいんだ。


 私が君を好きだから、傍にいて欲しいと望むから。



「大好きだよ。晴矢、バーン」








 次の日、ダイヤモンドダストの練習場に彼は数人の仲間と共にやってきた。

 唖然とした私の先日の仕返しとばかりに「ヒデー阿呆面」と、そう言って、彼はトンと私の胸に拳を当てた。


「乗ってやるよ、お前の話に。俺だって負けたままなんざ真っ平ごめんだ」


 いいだろ、と笑う彼に、私は少しだけ星に手が届きそうになった気がして。


「………ありがとう」

「キャプテンは俺な。あーあと……二つ目の返事も、肯定しておくから」


 照れたように頬を掻いた彼の胸に拳を当て返して、よろしく、と微笑んだ。







▼唯一になる為に











まともにガゼバン書いたの何時振りですかね……。まとも、なのか?
リクエストは「カオス結成時」とのことでしたが、如何でしょうか?
私の文章構成能力じゃこの程度でせいぜいですので何卒御容赦を。
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2011 05 04 奏

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