稲妻1

□天上ハピネス
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天上ハピネス


 世界で一番好きで好きでたまらなかったんだよって、そう伝えられたら良かったね。

 私が気付くのはいつも本当に手遅れになってしまってからだ。

 そうだよ、今だって、そう。

 永い永い眠りにつくその寸前に脳裏に思い浮かぶのが君の笑顔なんてさ、全く、何て滑稽なんだろう。

 感情なんてすぐ消せると思ってたのに、纏わりついて離れない、離れないんだよ、ねえ。

 聞きたくて聴きたくてたまらないんだ、君の声。

 それを抱き締めてどうせなら二度と覚めない眠りにつきたいと言うのに。


 君が居ない世界で生き続けるなんて、私には到底無理なことだから。



「なあんや、案外ヘタレやな、あんた。

 ちぃとは諦めてこっちに来るかななんて期待したのに」

「・・・・・・・・・リ、」

「先年、二千年。あんたをずっと置いていくのはいやや。あんたを一人にすんのもな。けどうちが何千年も生きるなんて無理な話。

 だからな、うちと一緒に下界に来ぃ、セイン。そんでな、うちと一緒に生きよう」


 ヘブンズガーデンの祭殿に凛とした声が響いた。

 私がこの世で最も望んだ彼女の――・・・浦部リカの声が。

 彼女は私の手をむんずと掴むと、有無を言わせないどころか言えなくなるほどの威圧的な何らかのオーラを纏いながら、宮殿の外に出た。

 それから大仰な溜息を付いたかと思えば思い切り私を睨み付ける。


「リカ、あの・・・・・・」

「あんたはっ!! アレだけうちに嫁になれだの傍にいろだの無理難題ばっかり押し付けておいて!!
 
 勝手に何前年も孤独に生きるつもりしてたんっ?! 阿呆かっ、阿呆なんやなっ?!!!」

「いや、だからこれは、」

「いやもいいえもあらへんし。今日という今日は許さへんよ。観念して、うちにちゃんと言葉を寄越して」


 ふと、私の手を掴む彼女が震えていることに気がついた。

 ああそうか、君は。


「私は何処にも行きはしないよ」

「さっきまで眠る気してたくせになに言うとるん」

「それでも、絶対、もう、行かないよ」


 眠りにつこうとしたところで結局私は彼女の声を聴くたびに、彼女の笑顔を思い出すたびに、ぱっちりと目を開いてしまうに違いない。

 性懲りもなく君を探してしまうだろうね。


「愛しているよ、リカ。だから、私の傍に」

「・・・・・・・・・っ・・・阿呆、言うの・・・遅すぎやっ・・・・・・」


 私に振り向いた彼女の瞳が涙を湛えて潤んでいた。

 引き寄せて背を撫でれば堰切ったように流れ落ちる雫。



 愛おしい



 そう感じて、その感覚は今まで感じたどの感情よりも暖かくて切なくて、私までが泣きたくなる。

 不安になってくれたのだろうね。

 つまり、それだけ私を想ってくれたって事って、そう自惚れてもいいかな。

 どうしようもないくらい嬉しくて、彼女の涙をそっと指で掬い取る。


「君のこの涙にかけて」

「・・・・・・セイン・・・?」

「私は生涯君と歩むことを誓うよ」




 君の居る世界ならきっと私はどこに居たって幸せに違いない。

 いつまでも、どこまでも






▼永久を誓う

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