稲妻1
□残像
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残像
夢
希望
未来
そんなもの、って馬鹿にしてたけど、本当は何よりもきっと大事だった。
なのに、私はそういうものを何一つ大事に出来なくて、握りつぶしてきた。
私が手にしているものはガラクタばかりだ。
無くても必要の無いものばかりを手にして、本当に欲しいものなんてわからない。
手が届かないのは、私が弱いからなのかな。
踏み出すことが怖くて、微温湯につかったまま時だけは過ぎていく。
過ぎていくときに流されるばかりで、私は何一つ成長していない。
何かを得ようとするたびに、ガラクタが無くなるのを恐れて手を引いて。
所詮私の声は届かないね。
届けようなんて思ってない私のせい?
私の声なんて知らないだろう?
だって知ってほしいと思わないから。
音は届くんだろう?
でも、心に声は響かないでしょ?
聞こえはするだろう?
でも、私の気持ちは知らないでしょう?
何も望まないことになれきってしまたんだよ。
何が目標で自分がどうありたいかなんて忘れた私は、ただの生き人形。
ただ過ぎる毎日を何もなく過ごす私は酷く滑稽だ。
嫌なんだ。
本当に望んだ物は手に入らなくて、ガラクタだけで構成されていく自分自身。
自分が何なのかなんて、私にはきっと一生わからない。
「んなもん、誰だって同じだろうが」
長い長い私の独白を打ち切ったのは、鈴と響く声だった。
黄金色に輝く瞳に薄い水の膜をたゆたせて、彼は泣いているようにも見えた。
「だから、いい加減、目の前を見ろよ、馬鹿」
「・・・・・・君に馬鹿呼ばわりされるなんて、屈辱だよ、晴矢」
「うっせ」
俯いた彼の額にそっと口付けた。
私を構成する成分に、彼が確かに存在していることに気付いたことなど、私はまだ教えてあげない。
▼望んだのか望まれたのかなんて。