稲妻1

□とある日の事
1ページ/1ページ


とある日の事


 下界には面白いモノがたくさんあるらしい。どうせもう1000年先まで暇をもてあますのだから、と下界の降りてみることにした。(とはいえ、サッカーも大事ではあるのだが)

 なるほど、確かに天界ではみたこともないものがたくさんある。
 
 興味深く眺めていれば、ふと、見慣れてしまった焦げ茶色の豊かな髪と、上機嫌な顔が目に入るのだった。


「お前、ここで何をしている」

「・・・・・・まさかこんなところで鉢合わせるなんてよ、最悪だぜ」


 彼は私を一目見るなり、表情を一転させ、嫌悪するかのようになった。

 私だって、会いたいわけでもなんでもない。下界に来たのは全くの思い付きであって、彼に会うとは夢にも思わなかったのだから。


「何を、見ていたんだ?」

「何だっていいだろうが、キメェ、どっかいけ」


 彼が覗き込んでいたのは、洋菓子店であった。
 
 
「デスタ、お前、甘いものすきなのか?」

「うっせ。悪いかよ」

「・・・・・・悪魔って、普通のものを食べるんだな」

「魂がそんなすぐ喰えるかっつの」


 これだから無知なやつは、と鼻で笑われた。なんとなく頭に来た。

 嫌がらせにでも、と、洋菓子店の中に彼の腕を引いて入った。二名様ですか? と微笑みかけてくる店員にそうだと答え、ケーキバイキングを二人分、頼んだ。


「はっ?! 誰がお前と向き合ってお茶しなっきゃならねぇと、」

「うるさい、店内だぞ、静かにしろ」


 ぶすくれた彼を横目に、チョコレートケーキを二つ、取ってきた。私の分と、デスタの分。目を見張っている彼に、くす、と笑みがこぼれた。


「食べないのか?」

「・・・・・・きもいんだよ構うなっつか、敵同士だろうが」

「円堂に昨日の敵は今日の友だと聞いたからな、たまにはいいだろ。
 どうせ、千年先まで、勝負はお預けなんだしな」

「・・・・・・お前、変わったな」

「何?」

「なんか、キモくなった、五割り増しくらいで」


 そういいながらも、いつの間にかケーキを口に運ぶ彼に私はまた笑みを零して、私も私で、紅茶を一口啜った。


「でもま、今日だけはそんでもいいと思うけど」

「そうか」

「ただしここの支払い、セインの奢りな」


 ふんぞり返ってそう抜かした彼にすら、今日の私は怒りを感じなかった。





▼たまにはのんびりしても

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ