稲妻1
□とある日の事
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とある日の事
下界には面白いモノがたくさんあるらしい。どうせもう1000年先まで暇をもてあますのだから、と下界の降りてみることにした。(とはいえ、サッカーも大事ではあるのだが)
なるほど、確かに天界ではみたこともないものがたくさんある。
興味深く眺めていれば、ふと、見慣れてしまった焦げ茶色の豊かな髪と、上機嫌な顔が目に入るのだった。
「お前、ここで何をしている」
「・・・・・・まさかこんなところで鉢合わせるなんてよ、最悪だぜ」
彼は私を一目見るなり、表情を一転させ、嫌悪するかのようになった。
私だって、会いたいわけでもなんでもない。下界に来たのは全くの思い付きであって、彼に会うとは夢にも思わなかったのだから。
「何を、見ていたんだ?」
「何だっていいだろうが、キメェ、どっかいけ」
彼が覗き込んでいたのは、洋菓子店であった。
「デスタ、お前、甘いものすきなのか?」
「うっせ。悪いかよ」
「・・・・・・悪魔って、普通のものを食べるんだな」
「魂がそんなすぐ喰えるかっつの」
これだから無知なやつは、と鼻で笑われた。なんとなく頭に来た。
嫌がらせにでも、と、洋菓子店の中に彼の腕を引いて入った。二名様ですか? と微笑みかけてくる店員にそうだと答え、ケーキバイキングを二人分、頼んだ。
「はっ?! 誰がお前と向き合ってお茶しなっきゃならねぇと、」
「うるさい、店内だぞ、静かにしろ」
ぶすくれた彼を横目に、チョコレートケーキを二つ、取ってきた。私の分と、デスタの分。目を見張っている彼に、くす、と笑みがこぼれた。
「食べないのか?」
「・・・・・・きもいんだよ構うなっつか、敵同士だろうが」
「円堂に昨日の敵は今日の友だと聞いたからな、たまにはいいだろ。
どうせ、千年先まで、勝負はお預けなんだしな」
「・・・・・・お前、変わったな」
「何?」
「なんか、キモくなった、五割り増しくらいで」
そういいながらも、いつの間にかケーキを口に運ぶ彼に私はまた笑みを零して、私も私で、紅茶を一口啜った。
「でもま、今日だけはそんでもいいと思うけど」
「そうか」
「ただしここの支払い、セインの奢りな」
ふんぞり返ってそう抜かした彼にすら、今日の私は怒りを感じなかった。
▼たまにはのんびりしても