稲妻1
□コンティニュー
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コンティニュー
※3期ネタばれ
景山が死んで、一番ショックを受けていたのは、他でもないあいつだったように思う。
憎い憎いと言いながら、それでもあの人を慕い続けた鬼道だから。
憎しみの絆ってのは、愛より強いと俺は考えるし、多分それは正解だ。
残留思念となって追い立てるのは、いつだって悪い記憶だけだから。
「センチメンタルだねぇ、鬼道ちゃん。
あいつが死んでそんなに悲しいかぁ?」
「・・・・・・総帥は、ようやく自身を取り戻したはずだった。
これからだったんだ、あの人が、「本当のサッカー」を得るのは。」
「これだから甘ちゃんは。
・・・・・・あの人はもう遅かったんだよ。今更だ。罪の重みを自覚させて、それに潰される人生よりはマシだったんじゃねぇの?」
大概自分も世話好きだなと吐き気がする。
慰めるなんて柄じゃないのに、そう言ってしまったからにはしょうがなくて、俺は鬼道の背をポンと叩く。
「・・・そうだな。悪いな不動、余計な気回させて。」
「そう思うなら最初っから凹んでんな、馬鹿。」
そう口角を吊り上げて笑ったら、鬼道もまた、同じニヒルな笑みで返してきた。
「不動。」
「あ?」
「せめてお前だけはずっと、俺の傍に居てくれ。」
いつの間にか回された腕。
鬼道の体が、吐息が、触れた部分を溶かしてく。
先に請うたのは、鬼道の様で、俺でもあった。
自分で言うことが憚られただけで、誰よりもこの男を求めてたのは。
「・・・・・・さぁな。」
自分の弱さも鬼道の弱さも、根源は同じようなところにあるから。
「でもまぁ、ちったぁ考えてやる。」
結局この馴れ合いのような恋情を止める術を、俺も鬼道も持っていないだけだった。
それでいいんだと開き直った。
傷ついてボロボロになって何もかも失って。
あとは、積み重ねるだけ。
「そろそろ練習に戻るか。」
はためかせた赤いマントのシルエットが悲しげで、思わず裾を握り締める。
驚いて振り向いた鬼道は、俺の俯いた姿を見ると、黙って額にキスをした。
「・・・互いに請うてるだけか。」
「るっせ。」
いつか、あの人に言ってみたかった。
俺も鬼道も、もうアンタの事は恨んじゃいねぇって。
結局、こいつと出会えたのは、あんたのおかげだったから。
なぁ、影山総帥。
これが最後の恋であれ。
(願わくばアイツとこれからを積み重ねられるように。)