稲妻1
□熱帯夜に御注意を!
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熱帯夜に御注意を!
うだるような熱帯夜。
窓を前回にして、扇風機を『強』にしても、依然として暑いまま。
しょうがねぇか、と南雲は少々怒気の含まれた溜息をついた。
この暑い最中、自分に抱きついて眠る亜風炉を見ながら。
「・・・あーもういい加減暑い。」
「災難だね晴矢。ちなみにそのままでいるつもりなら、君は二股してるって捕らえていいのかな?
私と言うものがありながら、いい度胸だね。」
「いや違う、断じて。
つーかコイツ寝相悪すぎなんだよ。絶対俺の事抱き枕か何かと勘違いしてるだろ。」
あー鬱陶しい、とそう言って、亜風炉を薙ぎ払う。
ごろごろと転がって、亜風炉は壁に激突した。
「「・・・・・・。」」
「いやいやいや、あれで起きないって。」
「永久の眠りについたのかな。」
「自重しろお前。」
そんなやり取りをしていた瞬間。
「うあ□☆^Σ;〜〜〜っ!!!!!」
「「!!?」」
奇声を発して、亜風炉は突然立ち上がった。
涼野も南雲も目を見開く。
「虫!! 蚊!! 人類の敵!!!」
「規模でけえしっ!! 窓閉めるな暑いっ!!!」
「何言ってるの南雲君っ!! 僕の血を吸う輩は抹殺しないと駄目なんだからっ!!!」
「うるさいんだけど。」
さっきまで眠っていたせいかやたらハイテンションな亜風炉。
何処から持ってきたのか、その手には蝿叩きが握られている。
「蝿叩きじゃ蚊は潰せないから。・・・ってゆーか、どさくさにまぎれて晴矢に近づかないでよ。」
南雲の手を引き、自らに引き寄せる涼野。
「っちょ、風介っ!」
「・・・・・・あ。」
バチン。
小気味よい音と共に、涼野が南雲の頬を思い切りたたいた。
「いっ!!!?」
「蚊、止まってたから。ちょっと血が出てるね。」
「どう見ても今のは蚊じゃなくて君のせいだと思うよ涼野君。」
ひくっ、と口元を引きつらせる亜風炉を尻目に、涼野は南雲の血を指で拭う。
そして、何を思ったか、指についたソレを舐めた。
「・・・何してんのお前。」
「蚊が好んで吸うくらいだから、血って甘いのかなって。」
「んなわけあるか馬鹿。」
「うん、鉄っぽかった。」
大真面目にそういった涼野。
南雲は大きく溜息をつき、涼野から離れ窓を開ける。
「南雲君、そんなことしたら人類の敵がっ!!」
「知るか、ノー●ットでもつけとけよもう。」
それに、と南雲は振り返る。
「俺からしたらお前らの方が有害だ。」
「「・・・。」」
「わかったなら寝ろ、俺は眠いんだ。」
「あ、うん、お休み南雲君。」
「お休み晴矢。」
返す言葉も無く、布団にもぐりこむ南雲を見届ける二人。
やかて、涼野がポツリとつぶやいた。
「蚊より有害な私って何だ。」
「・・・うん、ふざけすぎたかな。」
そう苦笑して、亜風炉はノー●ットをつける。
「お休み涼野君。」
「あぁ、うん。」
呆気なく、唐突に、騒動は幕を閉じた。
後にはタイマー設定の扇風機が虚しく回るばかりだった。
熱帯夜
(よくある風景)