稲妻1

□約束
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「……止めはしないんだね。」
「貴様がさらなる高見へ上ろうというのに、何故私が止めなくてはならない。」
「ふ……そうだね、ウルビダならそういうと思ったよ。」

ほほえんだグランの顔。
その表情は寂しげな、それで居て嬉しそうな。
違うんだ私は。
いつだって少し言葉が足りなくてお前に伝わらない。
どうしたら、お前にもっと優しい言葉を掛けられる?

「ねぇウルビダ。俺は本当にこのまま先に進んでいいのかな?
罪悪感に駆られて、後ろを振り向かなくていいのかな?」

そんな言葉を真剣に言うお前。
私の答えなど、お前の答えなど、とうの昔に決まっているだろう?
両の手でグランの頬を挟んで、馬鹿か、と言ってやった。

「前に進むのは貴様が決めたことだろう。過去を振り返る余裕があるのなら、先へ進め。」
「けど……。」
「……私がお前の背を押してやるから。」
「!!!……そうだね。」

目線を絡める。
私には届かない高見へ向かうお前に、せめて小さな言葉を贈ろう。

「行ってこい、『ヒロト』…私は此処で待っている。」

この高鳴る胸と熱情をまだ今は覆い隠して。
きっとお前が帰ってきたときには。

「ウルビダ。」

不意に掛けられた声に反応すれば、頬を掠めた暖かい何か。

「帰ったら、伝えたいことがあるんだ。」
「……聞いてやる。帰ってきたら…な。
だが、すぐに帰ってくるなよ。」

言葉の正体には鈍感なふりをして。
帰ってきたら、真っ先に合うのは私だと暗に示して。

そっと握られた手を、私もそっと握り返すのだ。

「行ってくるよ、『 』」



End.
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