稲妻1
□まだわかりませんか?
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まだわかりませんか?
「俺、綱海さんの事好きじゃありませんよ?」
そう、にっこりと笑った立向居に、世界が崩れていくような気がした。
好きじゃないなら、どうして俺に近づいたんだろう?
好きじゃないなら、どうして俺に笑いかけたのだろう?
好きじゃないんだろう? 何で俺の側に居たんだよ。
キライナラ ナンデ、ツキアオウ、ナンテイッタノ?
「そ・・・うか。」
からからに渇いた唇は上手く言葉を紡いでくれはしない。
言葉もそこそこに、俺はその場から逃げ出した。
・・・否、逃げ出そうと試みた。
だけど、振った腕は立向居に掴まれていて。
「離せよっ・・・!!」
「嫌です。なんか勘違いしてません?綱海さん。」
「何がっ!」
思わず振り向いた俺を抱きしめる立向居。
そのぬくもりが恋しくて、ギュウとしがみ付けば、抱き締め返してくれたりして。
「俺、綱海さんの事好きじゃないですよ?」
もう一度そういわれれば、もう俺は泣くより他無くて。
好きじゃない、と公言する彼の腕に、更に力が篭っているのにも気付けない。
「・・・俺はっ・・・立向居の事・・・っ、好きだぜっ!?」
「そうですね、知ってます。」
そうつぶやいて、立向居は俺の耳元で言った。
「俺は、愛してますから。・・・・・・ね?条介さん。」
好き以上に愛してる。
End.