CP連載

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 やっぱり臨也は最期まで笑ったままだった。

 ただ、一つだけ救いがあるならば。

 その笑みは気丈を貼り付けた偽者ではなく。





 涙の浮かんだ、痛々しい笑みだったことかもしれない。
















「シズちゃんのバーカ」

「あ?」

「バーーーカ」

「殴り飛ばされてぇか」

「御免被ります勿論。

 ……違うよ。

 俺は、君に何も遺したくなかった。

 あんな奴、いなくなって清々したって、そう思って欲しかった」


 臨也はそう言って細くなった指を俺の指に絡めた。


「もう、手遅れだね」

「……は、何言ってやがるこのノミ蟲が」

「ひど」

「お前が居なくなったら、こういう関係であろうが無かろうが、寂しくなってたに決まってんだろ」

「………シズちゃん」

「何だよ」

「痒い」

「てめっ」


 節目がちになっていた臨也はそう言って笑った。

 バツが悪いような、で、俺はそっぽを向く。

 息苦しいくらい時間が過ぎて、臨也はポツリと呟いた。


「俺は、神様なんて信じてないけど」

「あぁ」

「……生まれ変わったらもう少し性格のいい奴になって、もう一度シズちゃんに会いたいなって思った。

 輪廻なんて、信じてなかったけど。信じるなんて馬鹿だけど。

 なんか、思った」

「………そうか」


 臨也はこれ以上ないくらいしおらしい顔をしていて、どうしようもなく俺は心臓を掴まれた気がして。

 なのに。

 フレンチキスを落としたら、全力で殴られた。


「ほんと、油断も隙もないねシズちゃん。一遍死ね」

「おまっ……仮にも付き合ってんだからこんくらいさせ、」

「……君にうつったらどうするのさ」

「え」

「なんでもない寝る」


 ベッドにもぐりこんで臨也は倒れるように眠りこけた。

 最近は、話をしてるのも辛そうなの、本当は察していた。


 俺のエゴで、アイツの命の長さを縮めているのかもしれない。


 だけど。





「ねぇシズちゃん」

「何だよ」

「俺の命が縮んでもいい。君は最期まで俺のそばに居て、俺と話してて」




 そう願ったのは紛れもなく、




 臨也自身だった。






to be continued...

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