CP連載

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 それは俺が臨也を見舞った日のことだった。

 病室に入っていくクルリとマイルを見届けて、病院を出た時。



 電源を切っていたことを思い出して携帯の電源を入れなおす。

 そのタイミングを見計らっていたかのように、中々鳴らない携帯が着信音を立てた。

 不思議に思いながら、携帯を開く。

 見たことも聞いたことも無いメールアドレスが画面に踊っていた。

 眉を寄せながらも見なければ始まらないとメールを見た。



 
 ―――……メッセージヲ……受信シマス……

    …! 発信元ハ……… 未来ノ………







 静雄が亡くなって行き場を無くしたサイケは、結局静雄の願いもあって私の家に来ることになった。

 預かったハードウェアにはまだ一度も触れていない。

 どうすればいいのか考えあぐねていた。

 静雄の最期に立ち会ってからというもの、サイケの様子はどこか不自然で。

 暇さえあれば何かを熱心に作成している。

 それが静雄の意思なのか、サイケのほんの少し芽生えたココロからなのかは私には判らない。

 
 そんなある日。


「シンラ、ハードウェア、かして?」

「………サイケ、君は一体、何をするつもりだい?」

【新羅、好きにさせてやれ。静雄の遺言にもあっただろ、こいつの望む様にって】


 釈然としないまま、ハードウェアを手渡した。

 迷い無くパソコンを起動させて、サイケはハードウェアをインストールする。

 自らの腕に配線を繋ぎデータを転送する前に、彼はとびっきりの笑顔を見せた。


「シンラ、セルティ、ありがとう。それから、

 ……………いってきます」


 二本の線が一気に桃色に染まる。

 びり、と高圧電流のようなものが走った。
 

 耐え切れるのか、


 不安になって手を伸ばして、けれどその手は宙を掻くばかりだった。

 全ての工程が終了した時点で、そこにサイケの姿は無かったのだから。


―――あはは、君らしくないね、新羅。大丈夫だよ、過去のシズちゃんを叱り付けに行くだけだから。

   もう戻ってこれないかもしれない、だけどいいんだ。

   これはオレが、サイケデリック臨也が、決めたことだからさ。

   シズちゃんの願いは、オレがこうすることで全部叶えられるんだよ。

   『俺』の最期に立ち会いたかったって願いも、きっと、聞き取れずにいた願いも、全部。

   だから、ありがとう、いってくるね、バイバイ。




「そうか、君は、」


 決断したんだね、と呟いた。

 私にできることはもう何一つ無い。

 精々、君が救われることを祈らせてもらうよ。


【新羅、サイケはきっと、幸せだよ】

「そうだね、セルティ」


 差し出されたPDAごと彼女を抱きしめた。

 いつも押し返す腕が、今日はそっと私の背に回される。

 温もりなんて無いはずなのに、確かに温かかった。



 結末を変えに行っておいで、サイケ。

 今の君ならきっと大丈夫。

 静雄を、頼んだよ。





 


 携帯から漏れる光とは到底思えないくらい眩い光が辺り一帯に飛び散った。

 堪え切れなくて目を瞑る。

 刹那の時間。網膜に焼き付いた強烈な光の残像が消えてからそっと目を開ける。


「初めまして、シズちゃん。なーんて、オレからしたら全然そんなこと無いんだけどさ」


 そう言ったそいつの姿はまさしく臨也だった。

 赤い瞳、フードの服、纏う空気。
 
 どれを取っても臨也なのに、決定的に違うところがあった。


 外される気配の無いヘッドホン

 伸びる桃色の配線

 優しげな微笑み


「てめぇ、何者だ」

「あは、ひっどいなあ、ちゃんとメール送信したじゃない。

 君に伝えたいことがあるんだ、シズちゃん。

 信じて、聞いてもらえないかな」






 そしてはじまる、終わりの物語




to be continued...

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