no title 3
□しんじる
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しんじる
※181Qネタバレ
「お前達がいて負けるはずがない」
赤司のその微笑みには、メンバーへの全幅の信頼が浮かんでいた。
少なくとも緑間は、そのふんわりと柔らかく下がった目尻を中学時代に見た覚えはなかった。
端的に言えば。
恐ろしかった。
そもそも、初めからしてどこかがおかしくてどこかが破綻している奴なのだ、と赤司に対して緑間はそう思っている。
突拍子も無い行動はそれがいつも最終的に良い方向に向かったから諌める者がいなくて。
不遜を通り越して神々しささえも感じる発言は全てがその自信の塊でしかないのであって。
だから、いつかは終焉を迎えるのだと、そう思っていたのだ。
だが甘かった。
どうしようもなく、取り返しもなく、お汁粉より砂糖菓子よりメープルシロップより。
ざりざりと砂を噛む様な食感を伴った圧倒的敗北感。
この男には何もかもが通じない。
そう、思ってしまった。
もう仕事はさせない。
そう憚った本当の意味で「全開」の赤司を見て、緑間はきゅっと表情を引き締めた。
そうでもしないと今にも崩れ落ちそうだったのは、自分でもよく理解している。
『もし負けたら好きなだけ僕を非難しろ、敗因は僕の今のゴールだ。全責任を負って速やかに退部する。
…そして罪を償う証として』
『両の眼をくり抜いてお前たちに差し出そう』
ああなるほど、と思った。
なんにでも努力を欠かさない赤司。その姿勢はそれだけでキセキだと、緑間は中学時代を思い返す。
思い浮かぶのはあれだけの(自分も含めて)性格破綻者または自分を持て余しているものの集まりだった「キセキの世代」をいとも簡単に手中に収めてしまったまさに絶対王者、その姿だった。
勿論その影に赤司の並々ならぬ努力があったことを緑間は理解している。
自分のストイックは赤司譲りで。
赤司のストイックは神をも喰らう。
それは、きっと他の「キセキの世代」にとっても周知の事実だった事だろう。
だから。
赤司の持つ「皇帝の眼」はあくまで能力としては彼にとってオプションなのだ。付加価値なのだ。
緑間には容易に想像が付いた。
もしも彼が両目を失ったとしても。
何も変わらないのだと。
いつもどおりの不遜な笑みを浮かべて。
それを。
「些細なことさ」
そういって許してしまうのだと。
そういった危うさは、赤司の周囲には日常茶飯事なのだ。
―――甘かった。
――――これはミスだ。
―――――― ―― ― ―――俺は、赤司には、
勝てない。
「真ちゃんっ、しっかりっ!!!」
そう思ったと同時に背をばんっと叩く衝撃を感じた。
後ろを振り向く。
心配そうに眉をゆがませ、それでも尚、笑っている相棒の姿があった。
「……高尾」
「あーあーあー、赤司ってマジとんでもねー。キセキどころかもうあれだね。国会議事堂のイスに座ってても俺驚かねーわ。
……しっかりしろよ、真ちゃん。まだ試合終わってねーぞ」
「…………そうだったな」
自殺点を挙げ。
自らの才能を人質にし。
絶対王者は不遜に笑う。
だけど。
その圧倒的フィールドの中ですら、高尾は何も変わらなかった。
ふ、と嫌な緊張が解けたのを緑間は感じ取った。
「やるぞ、高尾」
「おお」
試合はまだ終わらない。
「勝つのは、俺達だ」
▼誰よりも認めたお前へ
「お前達がいて負けるはずがない」
この時の表情が美人さんすぎてざんぷ持つ手ががたがたでした。
飴と鞭の使い分けうますぎるよ赤司さん。
私の中の緑間は赤司のその努力へのひたむきさを誰よりも評価してる人物です。
才能とか特殊能力に目を取られがちなほかの人と違ってストイックを愛する彼だからこそ、赤司にたいして何か感じ取るところがあるんじゃないかなー、と、か。
そんなわけで。