no title 3

□エンドカードについて全力で妄想してみる 1〜7Q
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第1Q の火黒


 夜の公園、バスケットコートに音が響く。

 ドリブルするボールの音、細かいステップを踏むバッシュのスキール音、そしてそれぞれ一つずつの、荒い呼吸と――…溜息。


「いや、やっぱねぇわ」


 終わり終わり、と片手を振ると、火神はベンチに腰を下ろした。

 荒い息のまま食い下がるように黒子がレイアップシュートを放つ。

 がぼん、と酷く間抜けな音とともにゴールリングにぶつかって跳ね返ったボールが、丁度火神の手の中に飛び込んだ。


「ナイスパス……って言やぁいいか?」

「……火神くんは意地が悪いです」


 そう言いながら、ようやく諦めの付いた黒子が火神の座るベンチまでふらりふらりと歩いてくる。

 かくん、と膝が折れて、黒子はそのままベンチに仰向けに寝転がった。はぁ、と息が漏れる。


「水分、取っとけよ」

「ありがとう、ございます」


 息も絶え絶えな黒子に火神は呆れ見かねて、自分のペットボトルを渡す。

 どうにか蓋を開けて二、三口飲むと、ようやく落ち着いたのか、黒子はようやく元の呼吸を取り戻したのだった。


「お前、ほんっとパス以外からっきしなんだな」

「返す言葉もないですね」


 すみません、と困ったように黒子は薄く笑った。今度こそ呆れを隠しもせず肩をすくめ、火神はペットボトルを取り返した。

 ごくりごくりと、豪快に全て飲み干したところで、黒子がぽつりとつぶやく。


「火神くん」

「なんだよ」

「間接キスですよ」

「……はっ?!」

「………いやあの、そんなに慄かれても……冗談です」


 わたわたと手の中のペットボトルをもみくちゃにしていく火神。

 それを真下から観察していた黒子だったが、ふとある事に気づき、火神の袖を引いた。


「見てください」

「あ?」

「星が、綺麗です」


 黒子の指差す先には、暗闇に浮かぶ満天の星の姿があった。

 視界いっぱいに広がった景色に火神が思わず息を呑む。

 と、袖を引いていた手を放し、黒子は脇に置いていたボールを持ち掲げた。


「でも、星の光じゃあまりに頼りありませんから。火神くんは太陽を目指してくださいね」


 その言葉に首を傾げかけ、ああ、と思い至ったように火神が頷いた。黒子の持つボールに手を沿え、馬鹿にすんな、と一言。

 おまけのように小突いた時に触れた髪が、存外に柔らかくてどきりとする。


「じゃあお前はブラックホール並みの影になっとけ」

「……火神くん、ブラックホールは影じゃないですよ」

「……マジ?」


 ま、ともあれ。

 と、二人は立ち上がる。


「もう一戦くらいなら付き合うぜ」

「お願いします」


 向かい合った二人の間で跳ねるボールは、これから始まる挑戦を予感させた。





▼星に負けない光と影を


 
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