稲妻2

□おこたの魔法
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おこたの魔法


※シュウが普通に現代っ子。ゴッドエデンはログアウトしました。





 おこた。

 それは日本の生み出した最高の暖房器具だと、シュウは思う。

 中に入れば即ぬくぬく。ついうとうとまったりと過ごしたくなる魔法が掛かっていると信じてやまない。

 わざとその温もりに包まれながらアイスを食べるのも乙だし、セオリーに乗っ取って蜜柑を食べるのも悪くない。

 よく中で丸くなっている猫は微笑ましい。

 し、首まで埋まってぬくぬくしているコタツムリと化した白竜も同様に可愛らしいとシュウは評した。


「白竜、こたつで寝たら風邪引くよ」

「んー……」

「話聞いてる?」

「んー……、今なんて言ったんだ?」

「つまり聞いてなかったと。風邪引くよって言ったの」

「おー……気をつける」


 手首から先だけを炬燵からだして白竜はひらひらと手を振り返事する。

 その声が既に眠そうで、シュウは苦笑してから手のひらに一房、蜜柑をのせた。


「ほら、蜜柑。食べるでしょ?」

「……食べる」


 無精だった身体を漸く炬燵から引きずり出して、白竜は丸ごと一つの蜜柑を受け取りのそのそと剥き始めた。


「醍醐味だねー、おこたに蜜柑」

「冬の過ごし方って言ったらコレに限るだろ」

「そだねー……。あ、雪溶けたらサッカーしようよ」

「何時になる事やら」

「じゃあ蜜柑食べたらストライカーズ」

「Wiiキタコレ」


 いいねやろーやろーと生返事が狭い空間に僅かに響く。

 シュウは一つ溜息をついて、蜜柑を頬張る白竜の隣に移動した。


「シュウ?」

「炬燵に入ってばっかりだと馬鹿になるって本当だなぁと思って」

「……誰が言ったんだそんなこと」

「僕」

「ああ、そう。俺が馬鹿だと、言いたいのか」

「んー……、そんな感じ?」

「お前ほんと悪びれないよな」

「事実は事実として認めなきゃ」

「……性格悪っ」

「ありがとう」


 にっこりと微笑むシュウに白竜は少しばかり恐怖を覚える。

 蜜柑を三房程口の中に放り込み、さっきのお礼と言わんばかりに黙って一房、シュウの眼前に差し出した。


「頂くね」

「おー…って、お前は!!普通に!!貰えないのか!!」

「えー、駄目?」


 その手のひらに唇を寄せ、シュウは蜜柑を食べた。

 白竜からしたらひとたまりもない。

 さっと腕を引いてぱくぱくと口を開閉するものの、声はうまく出てこない。

 勿論顔は耳まで真っ赤だ。


「だっ……駄目って」

「あはは、白竜かわいー」

「ばっ、」

「馬鹿なら聞き飽きてるー」

「……っ」


 先手を取られて白竜言葉につまり、無言の圧力に耐えかねてそっぽを向いた。

 こうなるシュウの独壇場である。

 白竜の向いている方向に自分が移動し、それたらまた移動し。

 それを数回繰り返したところで早くも白竜が音を上げた。


「あーもうっ!!お前は何をしたいんだよ」

「何って……白竜をいじくりまわしたいと言うか、愛でたいというか」

「俺は愛玩人形じゃないんだが」

「そうだねー。んー……じゃあ、エロい事したい」

「………ごめんよく聞こえなかった」

「白竜にエロいことをけしかけたい」

「お前一回頭の中大掃除した方がいいと思う。もう年越したけど」

「ずっとおこたに入ってたから、僕も馬鹿になったんだよ。

 じゃあしょうがないからキスだけ」

「何処をどう譲って「じゃあ」になったのか聞きたい」

「……聞きたいの?」

「やっぱいい」


 じりじりと迫り寄ってくるシュウの目は本気モードで、その目に基本的に勝った試しのない白竜は、溜息をつくとようやく観念して目を閉じた。


「あのさ、白竜」

「……何だ」

「今年もいい年になるといいね」

「……おう」


 そっと触れた唇は少し冷たい。

 重なる時間で少しずつ温度が移っていつの間にか同じ温度になるのを感じながら。


「今年も、宜しく」


 二人は同時にそう言った。












▼温かな一年を


 

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