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NO.6 紫ネズ
※紫苑が大学の薬学部に通っててネズミが町の劇団員で、同居してるパロディ。
「紫苑」
「……んぅ…あと30分」
「そりゃ幾らなんでも寝すぎ。あんた、今日一時限から講義入れてたんじゃなかったの?」
「………あっ」
冬に近づきつつあるこの季節。起きるのは少しつらくなり、まどろむのが心地よい。
芋虫の如くもふもふと布団にくるまっていた紫苑はネズミの言葉にその布団をがばりと剥いだ。
そのまま洗面所へ向かい、一分も経たないうちに用意を済ませて出てくる。
「今日生薬実験………!!」
「は、漢方作るの?」
「そりゃあ薬学部だよ? やらないほうがおかしいだろ。
………あー……今からじゃ遅刻……?」
「いや、ギリギリ。ほら、弁当作っといたから」
「ありがとう……!」
弁当を引っ手繰る様にして受け取り朝食も食べずに外へ飛び出す。
「いってらっしゃいませ、陛下?」
皮肉交じりの挨拶は、最早週に三度は見る光景だった。
「ただいま、ネズミ」
結局その日の一時限は滑り込みセーフで、手に葛根湯を持って帰ってきた。
「君にお土産。最近風邪気味らしいから、丁度良かった」
「何それ、効くの?」
「葛根:8g、麻黄:4g、大棗:4g、桂皮:3g、芍薬:3g、甘草:2g、生姜:1g。
比較的体力のある人で、自然発汗がなく頭痛、発熱、寒け、風邪、初期の熱性疾患、または鼻炎、結膜炎・扁桃炎、肩こり、じんましん、湿疹、上半身の炎症性疾患などに用いられる。
それから、」
「わかった、もういい。もらうよ紫苑。飲めばいいんだろ?」
「うん。君の声が風邪なんかの所為でしわがれるのは勿体無い。
来週は舞台があるって言ってたし、ここで体調崩したら元も子もないから。
それ飲んで、ゆっくり休んで……あ」
「なんだよ」
何か思いついたように紫苑は頷き、冷蔵庫から冷えた麦茶を持ってきた。
「風邪は他人に移すのが一番手っ取り早いから」
さらさらと薬を口に含み、麦茶を一口。
ぎょっとしたネズミの腕を掴み、口付けた。
漢方薬特有の苦味と、紫苑の唇の温度。
移された漢方と麦茶をどうにか飲み下し、ネズミは紫苑の胸を押す。
「あんた馬鹿だ」
「知ってる」
「風邪、移っても知らないからな」
「うん」
「来週共用試験って聞いたんだけど」
「あの試験の対策テストいつも満点だから」
「……嫌味?」
「事実だ」
ネズミは長い溜息をついて、ソファに腰を下ろした。
「どうぞお好きに、陛下」
▼勝ち目など最初から
ネズミの劇団員設定が生かせてないw
薬学部うんたらは地元の大学の薬学部のオープンキャンパスに行ったので使ってみました。