no title 2

□君と僕の平行線
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君と僕の平行線


 例えば、と呟いた声はどこか空ろで中身が無い。

 何処かで交じり合ったはずの僕と君は、交差して、しかも平行して。

 二度と交わる事は無いのかもしれないと漠然と悟ったのは、17回目の誕生日の事だった。


 NO.6が無くなって、町は再建が始まって。

 
 僕はと言えば、毎日忙しい日々が続いて、それは西ブロックの生活と大差なくて。

 再建に関わらない人になればなるほど、生活はNO.6時代とそんなに変わりは無くて。

 カクメイを起こすには、起こした人だけが苦労を被るのかな、なんて、正直だらけた。 


 17歳の誕生日は、結局母さんと莉莉が祝ってくれた。

 それはそれで嬉しいはずなのに、僕は何時まで経ってもこの空虚を、この渇きを、抑えられない。

 
 紗布は、本当に僕なんかに後を任せてよかったのだろうか。

 ネズミがエリウリアスに宣言した僕は、僕でいられているのか。



 ネズミを追いかけたくてたまらなくて、未だに窒息しそうになる僕が、NO.6の後を追わないなんて誰が決め付けられる? 

 こんなに傲慢で嘘吐きで、執念深く何時までも窓を開け放して置く僕が、どうして人々を導いていける?



 きっと、もう二度と会えない君に、どうしたら僕は近づけるだろう。





「再会を必ず、紫苑」






 そんな言葉、誰が信じるんだろう。



















 明日が紫苑の20歳の誕生日だった。

 思い出さないように気をつけていた、押さえつけていた、そんな感情はそろそろ渦に飲まれそう。

 ごめん、と告げたはずの唇は、結局開くことなく、胸の奥に蓄積するばかりだ。


 

 「再会を必ず」




 なんて言いながら、俺はきっとあの日嘘を吐いた。

 二度と会わないつもりで嘯いた言葉は、結局俺を縛り付けてこんがらがったまま。


 だって。あの状況で。


 俺が戻ってきたら、あんたは何も変わらないんだろう?

 俺が傍にいたら、あんたは俺に縋るんだろう?



 対等で居たいと言ったのはあんたの方じゃないか、紫苑。

 俺と対等で、平等でありたいといったのは、紫苑、あんたの方だ。



「だから、この痛みも対等だろ、紫苑」



 呟く。

 心の奥底から嘲笑が浮かび上がって、きっとこの場に紫苑がいたなら『ヒステリーから来る発作かと思った』なんて水をかけられるのかな、と思った。


 ……馬鹿やろう。

 何につけて、紫苑と結びつけるのはもうやめろ、ネズミ。



「ごめんな、紫苑。会いに行ったら、あんたは叱るか? 縋るか? ……対等でいてくれるか?」
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