no title 2

□六等星の夜に
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六等星の夜に


※アニメEDから妄想ネタ。


「西ブロックにもさ、公園ってあったんだな」

「そりゃあ、元は美しい町でございましたから、陛下?

 寂れて軋むブランコに、錆付いたジャングルジム、おっと、石の滑り台は健在ですね?

 遊び回りたいのでしたら、御自由に」

「君は?」

「御免被る」


 ぶす、と膨れてネズミはそっぽを向いた。紫苑ははは、と苦笑いをし、ネズミ曰く寂れたブランコに手をかけた。

 軽く揺らしてみる。

 キィ、と小さく悲鳴のような音を響かせた。


「凄い、ブランコってこんな音がするんだ」

「おっ、思ったより普通の音がした。見た目より古くないのかもな、コレ。

 ……ていうか、紫苑、もしかしてアンタ、ブランコ初挑戦か?」

「NO.6内では外で遊ぶより頭脳系の遊びの方が称賛されていたから」

「これだからお坊ちゃんは」

「煩い」

「ほら、どうぞ陛下、僭越ながら最初の何こぎかは押してあげる事に致しましょう」

「君も遊ぶことにしているじゃないか」

「煩い。あっ、さっき聞いた台詞だな」


 ネズミに後押しされ、おずおずと紫苑がブランコに乗る。

 
「ブランコってのは立った方が面白いんだけどな」

「あっ、そうなんだ?」

「行くぜ」


 それ、と間の抜けた声と共にブランコが揺れる。初めはおっかなびっくりだった紫苑も、数分もすると一人で楽しそうにブランコをこいだ。

 役目は終わったとばかりに隣のブランコに腰掛けたネズミの表情には笑みが浮かんでいる。


「16にもなって初体験か。いいね、シュールで」

「なっ……」

「どうぞ陛下、存分にお楽しみ下さい。

 これが終わったら、ジャングルジムにも登ってみますか?」

「ジャングルジム?」







「お手をどうぞ、陛下。足下、大変滑りやすくなっておりますのでご注意くださいませ」

「……君は完全に僕の事からかって楽しんでいるだろ」

「あ、ばれた? あったりまえだろ、16にもなって公園デビューとか、笑いすぎて涙が浮かぶね」

「別に公園なら、初めてじゃない。

 NO.6に居た頃の業務は森林公園の清掃作業員だし……」

「それは仕事であり、こんな遊具で遊んだ事も無い奴が何言ってんだって話」

「それはそうだけど」


 するするとジャングルジムの天辺まで登り、直の事手まで差し伸べてくるネズミを睨み、しかし楽しそうに紫苑は文句を言う。

 どこ吹く風、と言った様子でネズミはその文句をかわし、ふ、と微笑んだ。


「紫苑」

「なんだ」

「遊ぶって、こういうことだよ」

「……そうか」

「んじゃ、初体験の御褒美でもあげようかねぇ」

 
 ジャングルジムから滑り台に飛び乗り、ネズミはすぅ、と空気を身体に取り入れた。

 ぱちくりと瞬きする紫苑をちらりと見、それから両腕を空に仰ぐ。


「      」


 聴いたことの無い旋律が、夜の闇に溶けて行った。

 紫苑はじっと聞き惚れ、ネズミは慈悲深く笑った。


「……君の歌、やっぱり好きだよ」

「お褒めの言葉、どうも」


 ととっと滑り台から降りてきたネズミに興奮しながら声をかける。


「じゃ、これ仕上げな」

「?」


 ネズミが地面の雪を掻く。

 丸い雪玉を作り、放った。


「雪合戦なんて、紫苑、初めてだろ?」

「え、ちょ、ネズミ、待って」

「問答無用だ」


 幾つも幾つも飛んでくる雪玉に紫苑は思わずしゃがみこみ……。


「このやろ」


 ぽい、とネズミに投げ返した。


「なかなかやるじゃないか、紫苑。

 手を止めるなよ、どんどん行くぜ」

「っはは、僕ら、子供の頃に逆流してるな」

「ご冗談を。今日この限りです、陛下」


 笑い声が響く。

 闇に反響して、静かに消えた。







 空には星が、光り輝く。








▼晴れた夜に



 

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