no title 2
□嘘吐きなんて言葉聞き飽きた
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大概大嘘つきだよ、俺もあんたも。大嫌いだと言ったらあんたと同じなのかな、俺は。
とっくに依存しきってるのさ、結局。
弱いくせによく吠える従順な犬。それが初めの印象で、なかなか払拭されるものでもなかった。
それが今ではどうだ?
どこが世間知らずの貧弱なお坊っちゃんなのか。
「紫苑……やめて」
「嫌だ。君はいつもそうだ。人には何かを強いるくせに自分が強いられるのは嫌いなんだろう?」
ボロいベッドのスプリングが大きなな音を立てて軋んだ。
二人分の重量がかかることが想定されていないそれは、今にも崩れ落ちそうだった。
自分の上に覆い被さった紫苑を見つめ、小さな溜息をつく。
長い長いキスの後の余韻など、どこにも無かった。
「陛下は何時から同性愛に目覚められたのです?」
「そんなんじゃないよ、ふざけるなネズミ。
僕は只、君のことを、」
「あんたこそ、ふざけんなよ。あんたにとって俺はなんだ? 仲間なんぞ甘ったるいことほざいていたのはどの口だ。
あんたはただ、自分で理解出来ない感情を愛に置き換えてるだけだよ、紫苑」
愛だの恋だの、馬鹿みたいだ。
そう続ければ、紫苑はその言葉を掻き消すように、唇を重ねる。
不毛だと思った。
だってそうじゃないか。本当に届けたい想いは交錯して伝わらない。
俺も好きだよ、そう言ったらどんな顔をするのかなと遠のいていく意識で考えた。
身体にのし掛かる重みと、紫苑の熱。鈍い痛み。
ああくそくらえ。
紫苑の瞳を見つめた。
あんたがいつか俺を本当に愛するようになったなら、その時は。
▼嘘が真実に塗り重なるまで。