no title 2

□誓いと破棄
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※四巻辺り。原作時間軸無視し気味




 紫苑

 紫苑

 このながわたしをまもってくれるの

 わたしをはげましてくれるの

 ねえ紫苑

 わたし

 あなたのこと

 あいしてるけど

 たまにすごくきらいだったわ

 だってあなたがしあわせそうにはにかむのは



 いつだってわたしがしらないだれかのことでだから










「なあネズミ、沙布は無事だと思うか」

「それはどういう意味で。

 何一つ変わっていないか、心が壊死してないか、五体満足か。

 いずれにせよ期待はしない方がいいんじゃない?」

「……辛辣だな」

「現実はあんたの母親の菓子パンみたいに甘くない。

 まして矯正施設だ。無事だなんて甘い言葉、俺が吐くはず無いだろ。

 ま、行けば分かる事さ」

「そうか」


 紫苑は後は何も言うこともなく、静かに目を閉じた。


 こんな時の紫苑は強い。


 ネズミは白湯を一口飲み下した。

 自らの奥深くで戦っている。思考の海をさまよい、俺には到底辿り着かない答えを探し当てる。

 邪魔は出来ない。

 ことりとカップを置き、ネズミは本を手に取った。


―――ハンプティ・ダンプティ塀を上った

   ハンプティ・ダンプティ落っこちた

   王さまのお馬をみんな集めても

   王さまの家来をみんな集めても

   ハンプティを元には戻せない


 マザーグースの一節。

 たまたま開いたページにしては不吉だな、とネズミは意図的に溜息を吐く。


 信じているのか、あんたは。

 矯正施設に収監された、しかもその事実すら消された少女が、本当に何も変わらず存在し続けていることを。

 あんたが、俺が、救えることを。

 ………本気で?


 馬鹿野郎。



 声には出さず、呟く。

 紫苑が見いだそうとしているものはネズミにはちっとも分からない。


「ネズミ?」

「……あ」

「珍しいな、君がぼうっとするなんて。疲れているなら寝た方がいい」

「あ、いや。……うん、そうだな。一足先に寝かせて貰う。

 お休み、紫苑」


 心配なんか、と思いながら声を掛けられれば安心するこの気持ちの名は知りたくない。

 ただ願わくば、俺達の戦いが、終着点になればと。










 紫苑

 まってるわ

 あなたのこと、ずっとまってる

 だからどうかあいにきて

 あなたがたいせつにおもうだれかといっしょに

 紫苑







 あいしてる

















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