no title 2

□自業自得のsweet boy
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自業自得のsweet boy



 いい天気だったから、偶には顔出してやるかってふと思い立って欠陥の住む骨董アパートを訪れた。

 アポなしでいきなり行ったところで、流されるのが大好きな鏡な恋人は仏頂面なりにもてなしてくれるに違いない。

 ぎぃぎぃと軋む階段をなるべく音を立てないように上がっていって、鍵を開けて(失敬)前触れなくあける。


「やっほーぉ欠陥、暇だから遊びに………どーした、欠陥」

「……いつになくテンションが高いね零崎。状況は見て察してくれよ」

「……おう、悪い」


 欠陥はがっつりと……そう、緊縛系のエロ本とかにありそうな格好に縛られて転がされていた。

 周りにはメイド服やら女子の制服やらが散らばっていて、……なんというか、壮絶な戦いがここで繰り広げられていたことを想起させられる。

 取り敢えず、開け放したままだった扉を無言で閉めしっかりと鍵を掛け、ついでに間違っても開かないように立てかけてあった傘をつっぱった。

 それから、バタフライナイフ(唯一の一本)を取り出し、欠陥の体の上を縦横無尽に駆け回る縄の数々をばらばらと切り刻んでいく。

 それでようやく欠陥は自由になって、深い深い溜息をつくのだった。


「……なんつーか予測は立ってんだけどさぁ。一体死色に何されそうになったわけで何の返り討ちでそうなったんだ」

「哀川さんの仕業だと予測が立っている時点で理由も分かって欲しかったんだけど」


 欠陥はそういって縄をゴミ箱に放り投げ、散らばった服を寄せ集め畳み始めた。


「澄百合学園に潜入したときに着せられた女子の制服が哀川さん、ひいては友にまでえらく気に入られちゃってね。

 着せ替え人形のドール宜しく、びらっびらのドレスやらメイド服やら制服やらを持って来られて着せられそうになった。

 ……抵抗のあげくに、「そーかそーか、いーたんはそんなに女の子になりたくないのかぁ、しょうがねぇなぁ、じゃあお姉さん免除してあげちゃおっかなぁ、黙ってふん縛られてくれるならっ」ってね。

 ふん縛るって言うから、簀巻きと勘違いしてたんだよ、全く、戯言にも程があったよね。見られたのが君じゃなくてみいこさんだったら今頃僕は首をつって死んでいたに違いない」

「………それは、傑作だったな」


 ………同情。


「所で零崎、今日は何しに来たんだい? まさか僕のSOSを聞きつけてやって来てくれた訳ではないんだろう?」

「んぁ。暇だったし天気がいいし、なんとなく顔出してみっかなーってノリ。結果オーラィだったな」

「じゃあ、今日の君の日程はこのあと特に無いんだね」

「そーゆーこった」

「じゃあ、さぁ」


 ……嫌な予感がひしひしとした。


 手に取ったばかりの制服を持ち上げ、欠陥は俺の胸の前に当てた。制服って、勿論、女子の。

 僅かに口角を吊り上げた欠陥に、嫌でも次の台詞が思い至ってしまい、俺は数歩後ずさる。

 だが、四畳間の狭いアパート。すぐに壁にぶち当たり、少し目がイッちゃってる欠陥を真正面に捉えることになった。


「……えーと? 欠陥製品……? 何考えてるんですかね……」

「僕の味わった屈辱を君にもお裾分けしてやろうと思って」

「だが断る!!」

「をさらに断る!!」


 あっという間にひん剥かれて、女子制服に着替えさせられた。

 ……なんでそんなテク持ってんだよ、とは言わない。うん、死色の手口をそっくりそのまま真似たに違いない。転んでもただでは起きない男、いーたんである。


 ともあれ。

 真っ黒なセーラー服である。スカートは一部が編みがけで、その下に布があるかと思えばそんなことはなく、見えそうで見えない、見たいなギリギリのラインでカットされていた。

 満足そうに欠陥は頷き、仕上げに髪を結んでいたゴムを引き抜いた。


「うん、やっぱり僕が着るより君が着た方が似合うね」

「そりゃ重畳。ちっとも嬉しくねぇよ、このド変態が」

「それ、澄百合学園の制服なんだぜ」

「お嬢様学校かよ」

「と見せかけた傭兵育成学校なのであった」

「何ソレ超怖ぇ」


 欠陥は幾度か俺の髪を梳く。

 この頃には、もうどうとでもなれ、とある意味悟りを開いてしまった俺がいた。


「さて、と」

「……まだなんかするつもりかよ」

「うん、お楽しみ。恋人がこんな可愛い格好してて美味しくいただかない男は不能だ」

「ド変態野郎っ、死に晒せっ!!」


 ……転んでもただでは起きない男、いーたんである。(二回目)


 拒否の仕方を考えてる暇もなく、追い詰められた壁際(しかも隅っこ)では逃げようもなく、ナイフは私服の中だから意味がなく。

 不意打ちにもならずに堂々と迫ってきた唇を避ける手立てはもう無く、俺は甘んじて受け入れた。

 ……そういうラブい展開が見えていたのにやすやすと服を着せられてしまった俺の、負けである。

 口内をねちこく這い回る舌と、その温度に酔いそうになる。肺活量はどう考えても俺の方があるのに、先にギブしたのは俺の方だった。名残惜しげに離された舌から、銀糸が伝う。


「っは……ぁ。なんなのいーたんっ!! 長距離ランナーにでも転向した?!」

「いや、特には……あ、そうか」

「んだよっ」

「僕のキステクが上がったんじゃない?」

「死ね」


 ……ロマンティックも何も無い。(つーかいらないけど)


 遠慮も無くもう一度きたキスを真っ向から受け止めて、ようやく観念して体の力を抜く。

 ……と、無遠慮にセーラーの裾をたくし上げ、欠陥の手が俺の体を這いまわす。


「ひぅ……ちょ…っ、欠陥っ」

「僕は結構我慢した。というか、この格好にするために脱がせたときに襲わなかった時点で僕は十分我慢した。だから、もう遠慮しないし僕は理不尽じゃない。君は甘んじて受け入れろ」

「はぁっ?!!」

「ということで。いただきます」

「ちょ、まっ……ひぁっ……」


 制止の手は間に合わず、時既に遅し、だった。



 この後の事は、俺の口から到底言い出せるはずが無いことを、ご了承いただきたい。

 どんな羞恥プレイだ。







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