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□夢幾夜
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夢幾夜


※めだ箱11巻巻末「球磨川事件補遺」その後。真面目。





「禊ちゃん、一緒に帰ろっ」


 喜界島もがながかちかちになりながら言った一言は、球磨川禊のハートを貫くには十分すぎる威力を持っていた。

 実は喜界島自身が既にキャパオーバーであることなど球磨川はいざ知らず。

 黒神めだかもけしかけた本人だけに、二人の間に割って入る事が出来ず。

 かくて、その日の帰路は喜界島と球磨川、二人きりの下校となったのだった。





『……喜界島さんは』

「な、何!? 禊ちゃん」


 話しかけられた彼女は裏返った声で返事をする。

 彼は苦笑気味に頷いて、隣を歩く彼女に視線を向けた。


『大したことじゃないんだけどさ。

 僕みたいなマイナスと一緒に帰ったりして気持ち悪くないのかなって、思っただけ』


 その言葉に彼女はむっと頬を膨らませた。

 そんなの、と紡いだ言葉は幾らか呆れが混じっている。


「そんなの関係ない。大体、禊ちゃんと帰りたいって言ったの私だよ?

 そんな事言っちゃ駄目だよ。これから、私達の仲間になるんだもん、今までの分禊ちゃんはいっぱい良いこと経験しなきゃ。

 それにね、禊ちゃんと仲良くなりたいもん、私」

『いい子だね、喜界島さん』

「そうかなぁ」


 彼と彼女に空白が横たわった。

 物理的に、感覚的に。

 一度止まった会話は取り返しのつかない失敗のように押し黙ってどうしようも無い。

 結局その差異を埋めたのは陽極(プラス)側の彼女だった。


「禊ちゃんは、優しいんだね」

『……え?』

「あのね、どう言ったらいいかよく分かってないんだけど。

 禊ちゃんって、人の痛みが凄くよく分かる人だと思うの。どんな苦しい、悲しい心も理解できるから、皆を救ってあげられるんだよ、きっと。

 私はそんな禊ちゃんともっと仲良くなりたいな。だって、黒神さんと同じくらい……、ううん、それ以上に素敵だよ」

『……それは、買い被りってもんだぜ』


 そう言いながら視線を逸らす彼はさながら普通で、何て事無い、週間少年ジャンプなら出落ちのモブキャラような、一男子高校生だった。

 勿論そんなのは嘘八百もいい所だし、彼とてそれを意識した行動ではないのだろう。

 彼女が物珍しさについ見つめていると、むっとしたように少しだけ、眉を寄せた。


 ああ、これだから、禊ちゃんは。


 憎みきれないの、あなたの傍にいたくなっちゃうの。

 困ったなぁ、と思うと共に、彼女は頬を仄かに赤く染めた。


 隠しきれない赤が、二人分、並んだ。


「……禊ちゃん」

『……うん』

「明日も一緒に帰っていい?」

『……そんなの』


 こくり、と息を呑む音を聞いた。

 果たしてどちらのモノだったのか、再び視線の混じり合った二人には分からなかった。



 球磨川禊はまるで風船を貰った純情無垢な子供のように、幸せを享受して生涯を閉じた老人のように、笑った。



『毎日だって、構わないぜ』







▼温かい夢を見せて











くまもが処女作!!
寧ろ前のキャラ掴みの小説? を気にしなきゃめだ箱処女作。

最近嵌ったから本誌も何も無いんですね。コミックしか知識がありません。本誌チンプンカンプン←
巷の噂だともがなん庇って禊ちゃん死にかけたとか人工呼吸という名のキスシーンがあるとかうわあああああ((ry
何ソレ萌えろと言わんばかりだな!!

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