no title
□X
1ページ/3ページ
NO.6 SS 紫ネズ
※最終巻後 同棲してる。
「例えばさぁ」
「ん、何?」
紫苑はソファから起き上がり、しかし話しかけたネズミがその場からちっとも動いていないことを認めまた寝転がった。
ちち、と小ネズミたちが鳴き、紫苑の胸に駆け上がる。
「俺が女だったら、あんな真似出来たのかなって思ってた」
「あんな?」
「矯正施設に侵入したり、あげく破壊したり。
ああ、それ以前にひ弱過ぎてあんたに会う前にジ・エンドだったかな?」
「ネズミ、それは」
「うん、わかってる。只の虚言だから気にするな。
ああ、でも私が女だったなら、陛下も女性に興味が無いのか、なんて聞かれることなかったでしょうね?」
ネズミの声が艶のある女の声に変化する。
ん、と伸びをした手がソファの上の紫苑の頭に激突した。
「前にも言ったと思うけど」
その手を取って引っ張って、ネズミの体をソファに倒す。
何処でそんな知恵を身につけたんだよ、と言わんばかりにネズミの表情がウンザリとしたものに変わった。
体を反転させ、ネズミの上に馬乗りになった紫苑は、そのまま彼に覆いかぶさった。
「僕は、君だから好きなんだよ、ネズミ。
もし君が、男じゃなくても女でも、ううん、きっと犬であろうと猫であろうと動物のネズミであろうと、君を見つける自信はある。
僕は、君じゃないと駄目なんだ。
君のいない四年間、色々と、本当に色々と環境が変わって。
NO.6は無くなってもこの土地に住む人は変わりないし、あの日君が市庁舎の真上で歌った日から、僕まで有名人になった。
おかげで、未だに改革期待してるよ、なんていわれる。
重圧だけはあるのに、側に君がいない四年間。
……どれだけ、君を望んだことか。
性別なんて関係ないんだ、ネズミ。
僕は君を愛してる。それだけで十分で………聞いているのか?」
ネズミはいつの間にか腕で顔を隠し、笑っていた。
それも大爆笑だ。
「っ……はは、相変わらず天然すぎっ………!!
降参だよ、紫苑。
俺はあんたを見くびってたのかもな」
「……褒められているんだよな?
ちっとも嬉しくないのはどうしてだろう」
「……っくく……」
あんまり笑い続けるネズミが腹立たしくなり、紫苑は腕をぐいとよけ、思い切りキスをした。
舌が絡まり、くぐもった声がネズミに口元から漏れた。
「………今の、何のキス?」
「そんな言い訳、まだ必要なのか?
………恋人にするキス、とか、口封じ、とか」
「ならいいや」
「?」
ネズミはすっかり上機嫌に、ポカンとした紫苑の鼻をつまんで、呟いた。
「あんたと一緒にいられる意味のキスなら、何でもいいよ。
俺も、あんたが好きだからさ」
▼昼下がり