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□V
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華鬼SS 響桃・華神


 その日小さな個人病院の分娩室に大きな泣き声が響き渡った。

 ほっとしたように体中の力を抜いた桃子は、手を握る響を見て幸せそうに笑う。

 響もまた、これ以上ないほど優しく微笑み返し、わが子を抱きかかえた。


「……ありがとう、桃子」


 ほら、と桃子の目の前に見せたのは元気に産声を上げる一人の男の子。力の入らない手でその体を撫で、桃子は響にどういたしまして、と返した。


「土佐塚さん、おめでとう」


 駆けつけていた神無は響と反対の方向から素直な祝福の言葉を送る。

 未だに響から警戒心を取り去ることの出来ない彼女だったが、無二の親友の出産には立ち会いたいと、華鬼の反対を押し切って重い体を引きずり平山病院の足を運んだのだった。

 桃子は神無に振り返り、にっこりと微笑む。


「神無、もうすぐ出産なのにわざわざありがとうね」

「ううん、ちゃんと、お祝いしたいなって思ってたから。

 ……名前は決まってるの?」

「京也だよ、神無」


 桃子の代わりに答えた響は、笑みを浮かべて神無とそのお腹の子を見ると、生まれたら仲良くしてやってね、とらしからぬ言葉を口にした。

 ぽかりと口をあけ、それから神無はこくりと頷く。


「よろしくね、京也くん」

「響、あんた何言って、」

「親同士が仲悪いからって子供まで敵対するなって言ったのはお前だろ。

 子供には子供の人生があるから俺と鬼頭のせいで歪めたくないし」

「………そっか」


 分娩室から出て行く最中で、華鬼を見た響は、よろしく、と謳いように告げた。

 挑発されたのかとイラつく華鬼を抑え、神無は先程の事をそれは楽しそうに伝えるのだった。


「みんな、友達」

「……そうか」

「帰ろう、華鬼。生まれたらまた、会いに来るね、土佐塚さん」

「またね、神無」

「また今度、鬼頭」


 それから少し時を経て、桃子の耳に、神無が男の子と女の子の双子を産んだと言う情報が届いた。

 鬼の女の子。


「京也、あんたは神無の子供を守るんだよ」


 まだ言葉も理解できない京也にそう言い聞かせながら、彼女は響とともに、理想を辿る生活を送るのだった。





▼友達と家族と
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