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□V
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桜花SS 風千
ノーマルED後
風間さんが薩摩に帰って一月。私はまだ五稜郭にいる。
擦り切れた誠の旗を繕って、土方さんと平助君のお墓に掲げた。
涙は止まることを忘れたように次から次へと零れて、大地に染みこんだ。
私は彼らを見限ったのかもしれないと、幾度も考えた。
風間さんに助けてもらった時だって、私に覚悟があればきっと淀城に戻っていたはずなのに。
自分の命惜しさに風間さんについて行ったんだって、そう思ったら私が皆を悼む資格は無いって。
だけど離れられない。皆が好きだったから。
瞳を閉じれば、今も優しい声が聞こえるから。
「ごめ………なさ……」
膝が崩れる、大地に溶けて散りたいなと思った。
なのに、その直前で誰かに支えられて、それは許されなくて。
「全くお前はまだこんな所に居たのか。まあ、予想はしていたがな」
「………風間、さん?」
「言っただろう、我が元に来いと。だが連絡も無ければ音沙汰もない。まさかと思って戻ってみればこれだ。お前は何をしている」
ふわりと抱きとめられた。温もりに触れて、今までとは違う、温かな涙が伝う。
「風間さん、私……私っ……」
「もういい、わかった」
風間さんは二人のお墓に目を留めると、今までに見たことが無いくらい優しいまなざしを浮かべた。
「お前が泣いていては、こいつらが浮かばれん。
……俺が言うのもなんだが、こいつのことはこの先俺が守ると誓おう。だから貴様らは安らかに眠れ」
それから私に向き直って、少し照れるように言った。
「帰るぞ」
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