no title

□V
1ページ/2ページ


桜花SS 風千

 ノーマルED後


 風間さんが薩摩に帰って一月。私はまだ五稜郭にいる。

 擦り切れた誠の旗を繕って、土方さんと平助君のお墓に掲げた。

 涙は止まることを忘れたように次から次へと零れて、大地に染みこんだ。


 私は彼らを見限ったのかもしれないと、幾度も考えた。

 風間さんに助けてもらった時だって、私に覚悟があればきっと淀城に戻っていたはずなのに。
 
 自分の命惜しさに風間さんについて行ったんだって、そう思ったら私が皆を悼む資格は無いって。
 
 だけど離れられない。皆が好きだったから。

 瞳を閉じれば、今も優しい声が聞こえるから。



「ごめ………なさ……」


 膝が崩れる、大地に溶けて散りたいなと思った。

 なのに、その直前で誰かに支えられて、それは許されなくて。



「全くお前はまだこんな所に居たのか。まあ、予想はしていたがな」

「………風間、さん?」

「言っただろう、我が元に来いと。だが連絡も無ければ音沙汰もない。まさかと思って戻ってみればこれだ。お前は何をしている」


 ふわりと抱きとめられた。温もりに触れて、今までとは違う、温かな涙が伝う。


「風間さん、私……私っ……」

「もういい、わかった」


 風間さんは二人のお墓に目を留めると、今までに見たことが無いくらい優しいまなざしを浮かべた。


「お前が泣いていては、こいつらが浮かばれん。

 ……俺が言うのもなんだが、こいつのことはこの先俺が守ると誓おう。だから貴様らは安らかに眠れ」


 それから私に向き直って、少し照れるように言った。


「帰るぞ」




▼さよならを告げる
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ