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□花嫁ごっこ
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花嫁ごっこ


 ジューン・ブライド

  :6月の花嫁。6月はローマ神話の女神で結婚と女性の守護神ユーノー(ジュノー)の月とされ、この月に結婚する女性は幸福になると伝えられる。(出典:大辞泉)








If is it realy ?






 りん、ごーん

 りーん、ごーん


 教会の鐘の音が周囲に鳴り響いて、その中心に居るのは二人の鬼だった。




 
「華……綺麗」

「ああ」

「……きっと、二人とも誰よりも幸せ」

「……ああ」


 華鬼は不機嫌そうに華の隣の男を見、ふん、と鼻息を鳴らした。

 神無はそんな華鬼をなだめるようにゆったりと微笑み、それから我が子の晴れ姿をこの目にしっかりと焼き付けるぞと言わんばかりに華を凝視する。

 華鬼は渋々と了承した結婚だったが。

 神無は願っても無い相手に二つ返事で結婚を了承していた。


「幸せに、なってね」




「まさか、つい最近まで『人間の男の子に印を刻むんだと思ってた!』なんていう馬鹿のほうが先に結婚するなんて思いもしなかった」

「誰が馬鹿だって?」

「言葉のあや!言葉のあや!!

 でもまあ、いいんじゃないか? 士都麻のことも俺は嫌いじゃないし」

「うん、僕もあの人は好きだよ。

 今日から多分一番大嫌いになるけど」

「……シスコン」

「なんか言った?」

「いいえ!」


 慌てて手を振った京也に、神楽は刀に伸びかけた手を引っ込めた。

 
「いいよ、僕は、華が幸せなら、それで」

「……そうか」






 



 明日はいよいよ結婚披露宴だった。

 緊張で震える華の手を握り締め、光晴はにっこりと微笑んだ。


「心配せんでええよ」

「……うん」


 光晴に伝えたいことはたくさんあるが、言葉にならないのがもどかしく、華は無言でその手を握り返す。

 彼は真っ赤になった華の長い髪をさらりとなで、あのな、と口を開いた。


「何?」

「昔、人の子と結ばれないのは、きっと光晴は鬼と結ばれるからって、そう言ってくれたことあったの覚えてる?」

「覚えてる。だって下心あったし」

「あはは、そんでもな、俺はあん時救われた。あん時、俺にはこの子が必要だなって思った。

 ありがとうな、華。

 ……絶対幸せにするから」

「……うん」


 微笑み交わして、結婚前夜。

 優しい口付けをした。











「ねえ、光晴」


 ブーケを投げる寸前に、華は光晴に話しかけた。


「何?」

「なれるよ。私は幸せに」

「……なんで、」

「だって六月の花嫁は幸せになるの、不可侵なの。

 だから、私の幸せにかまけて、光晴が不幸せなのは許さないからね」

「……じゃあ、誰よりも幸せになろ。

 二人で一緒に、な」



 花が舞う。

 ブーケが空を仰ぐ。



 




▼幸せ一番!!

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