夢々[長]

□月詠 1
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■Shingen Side


それは月の美しい晩だった。
凍てつくような寒さの中、その者は水面にうつる月を眺めていた。

音はない。

その者が口から息だけが白く吐き出されては消えていった。

片手には刀が握られている。

だがその儚くも神々しい姿はさながら天女のようにも見えた。

月明かりにきらりと光る銀髪は今でも目に焼き付いている。


あの晩、我は天女に心を奪われたのだ。

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