創作置場(短編、詩)

□見えない壁
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すき、なんて口に出してみたり。

何も出来ないまま時間はたっていく。

ねぇ、貴方私のこと嫌いになるよね。

いきなり好きなんて、友達だもんね。

私の柄に合うような事じゃない。

他の女子はみんな冗談で告白したり、ふざけ合ったり。

でも私には出来ない。

女友達より男友達が多い私は、一線を踏み切ることが出来ない。

他の友達も失うのが怖いから。

貴方との関係が、今の方が近いなんて嫌だから。

告白したって関係が変わって喋ってくれなくなったりしたら嫌だから。

そんな分厚いコンクリートの壁が私を邪魔してる。

嫌い。

何よりも自分が。

嫌い。

私の気持ちに築いてくれない貴方。

嫌い、嫌い、大嫌い。

私は悩んでるのに笑ってる貴方。




でも大好きで、愛おしくて、愛してる。

隣で笑ってる貴方。

優しい貴方。

悔しそうな貴方。

私は誰よりも知ってるよ。

もしかしたら貴方の両親よりも。

貴方の家族よりも長い時間そばにいる。

部活も、学校も、帰り道も、隣り合ったベランダも。

マンションの「此処を蹴って避難してください」を間違えて破ったふりをしたのも貴方。

そこに黄色いビニールテープを貼ったのは私。

だけどそこが一番好きな場所。

泣いていたら君が慰めてくれるから。

窓を開ける物音がしただけで、君が顔を出してくれるから。

ビニールテープの隙間から私を招き入れて大きな天体望遠鏡で星を見せてくれるから。


ねぇ、誰よりも近いはずだよね?


帰り道、大切な話をしよう。

貴方と私、ふたりきりで。

やっぱりやめた。

一番大好きな場所にしよう。

今日は空が晴れてるから、星を見よう。

それに今日は満月だ。

さりげなく、言ってみよう。


「好きです」


その言葉を。



貴方は受け止めてくれるかな。

貴方の弓が、唸る音がした。

平気だよ、アタシ。

私の弓も、唸った。



Fin.

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