創作置場(短編、詩)

□a ones morning
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ある朝、目覚めたら君は居なかった。

君の温もりだけが僕の横に残っていた。

君が寝ていた方に寝転がると、かすかに君のにおいがした。

「君は、もう居ない」

事実を確認するかのように呟いた言葉が空しく響く。

ねぇ、お願いだよ。

隠れてるなら出てきてくれよ。

僕が出来るだけ優しく、強く抱きしめるから。

ちゃんと君のこと守るから。

ちゃんと君のこと見守るから。

こんな事になるんだったら繋いだ手を離したり何かしなかったのに。

僕は君を愛しているんだね。

でも君はもう居ない。

忘れさせてよ、もうこれ以上――

これ以上君を好きにならないように。

戻ってこないなら、全部持って帰ってよ。

君が使ってた椅子と、コーヒーカップ。

歯ブラシ、コップ、それに、傘。

こんなに君がいたことを証明する物があったら悲しくなってしまう。

僕はひとりなんだと。

安くて、でも可愛いと黄みがかってきたペアのグラス。

手から滑り落ちて、



落ちて、落ちて、




あっという間に床に吸い込まれていく。





ガラスの割れる険呑な音が、響いて。






もう一つのグラスもそれに重なった。






それに重なった。






もう怖くないよ。
二つが重なったから。

僕らは二度と一つになれなくても、強く歩いて行けるから。





窓から差し込んだ光が、暖かい朝の訪れを告げた。






その中に、君の泣き顔が見えた気がした。






君も辛かったんだよね。



















大丈夫だよ。
僕は君を恨んだりしない。

今日はそういって笑っていられそうな気がする。




Fin.
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