創作置場(短編、詩)

□闇鯨(やみくじら)―Dark Whale― 始まりの章
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空に翼を広げ
雲の上を臨むその羽は
幾度も世界を見渡してきた
刹那、燃え堕ちていった仲間を想い
また、眼下に広がる海を見下ろし
満月の夜再び見上げれば
海賊の唄だけが空に響いていた
独り海を見下ろせば
そこに彼らの姿はなく
海面に満月が浮かび、波に打たれていた
満月も独りだと“それ”は想った
海に浮かぶ満月に見とれ
“それ”は海に堕ちた
羽は動かず、最後まで堕ちた
これで自分も終わりだ
“それ”は刹那に想い
見とれてしまった満月を恨んだ

燃えた仲間のことを想い
海の底に堕ちていくと仲間の姿があった
黒く動かない塊となった仲間たちは
動こうともしなかった
そして“それ”には何も話しかけなかった
“それ”は泣き叫び黒く染まり、闇鯨になった
闇鯨は仲間の残骸を喰らった
暗く、重い巨体は海賊の唄を聴いた
海の底で目覚め海の上を見ると
その日は新月で月は浮かんではいなかった

それから闇鯨は新月の夜にだけ浮上するという
その夜は闇に隠れるように
海賊の唄に耳を傾けるという

         Fin.

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