創作置場(短編、詩)

□regret
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茜色の空の中を、
手が届かないほど、
君はしたまで落ちていった。

後悔と懺悔と、ナミダ。
人生の中で最悪の日が、俺に訪れた。



いつもそれから先は思い出せない。
君は俺の腕の中で苦しそうにもがいた。
まだ君と、唇でつながっていた。

「ごめん」

「わたし、しんじゃう。しにたくない」

「死なないよ。ずっと一緒にいてあげるから」

君の脳は限界に達していた。
脊髄損傷で下半身不随。
脳出血による脳の萎縮。
その萎縮はもう生命に支障をきたし始めていた。
異常なほどに速くなる呼吸。
夜中に止まる心臓。
急に呼吸が出来なくなってあがく君。
全てが死の到来を意味する様になっていた。

君の体からでた線は、絡み合いそうなほどたくさんだ。
時がたつにつれ増えていくそれは、君の体が出来なくなった仕事の数を表している。
それでも夜中と苦しくなった時以外は酸素マスクをしない君。
いつでも一つになれるから。

「しにたくないよ、いきたいよ」

脳の萎縮が進んで、しゃべれる単語が少なくなっていく。

「ても、うごかなくなって、きたよ」

君の身体機能がどんどん失われていく。

「くるしい、いや」

単語だけになる台詞。
もはや一つになる事さえも許さない酸素マスク。

「まま。ぱぱ」

幻想を見る君。
代わりに頭を撫でる自分。

「とって」

とって、と、いや、しかしゃべれなくなった君。

「あ、だあぁぁ」

単語さえも失って言葉として意味をなさない君の声。
必死で聞き取る自分。

「きゃはははは…」

赤ん坊の様に笑う、君。
もう首から上以外に動かせるところはない。
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