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□大音量で消す貴方の残像
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重い頭をあげると不在着信が3件あったことに気づく。
携帯は常にマナーモード。それは中学時代の友達からだった。かけ直したりしない。そのまま携帯を閉じて再びヘッドフォンを耳にあてた。右三角のボタンを押す。ガーンッと頭を、いや脳を打つような衝撃が入ってきた。


いい、


昨夜の男と同じ台詞。


いい、


快楽に向かって泳ぐ上に乗った男を思い出す。

すぐに掻き消して

この声が、ギターが、メロディーが歌詞が、全てが

大好きだ


もっと音量をあげる。細胞が破壊されるかもしれない音量。細胞が破壊されたらいいのにと思う。















「綺麗な声、しとるの」

「は、いえ」

「絶対売れるけえ」

「ありがとうございます」

「おう」









「もしお互い夢叶ったら」

「はい?」








「二人で―


ヘッドフォンを叩きつけた。
床に落とされても普通に聴こえる音(よほど大音量なのだろう)
そのままステレオにささったヘッドフォンのコードを引き抜いた。
1秒程の間を置いて、爆発したような音が響いた。爆風がこちらにきたような気がした(よほど大音量だったでしょう)
頭から被りたい。
もう細胞もなにもかも壊されてしまいたい。
玄関のインターホン。隣人の苦情。
酔わせて
もっと


テレビで貴方を見かけます。
貴方は時に隣に座った女性アーティストと言葉を交わしています。
マイクはそれを拾いません。
私はそれを見つめてます。

何故私はここにいるのだろう。私はあの女性アーティストが今座っているあの場所を目指した筈なのに何故暗い部屋で真面目にヘッドフォンなんかでこそこそ貴方の音楽を聴いているんだろう。
何故好きでもない男に抱かれてるのだろう。


ギターソロが始まりました。
曲もそろそろ終盤です。







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