□暖かい場所
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「次は福島駅です」


アナウンスが聞こえた




あれからハンカチの彼は
寝息を立てて寝ていた。

少しいびきはうるさかったけど私には丁度いい気がした。

静かすぎると涙が出てきそうになるから…










もうそろそろ福島に着く。
ハンカチの彼を起こさなければ


………でも何て呼べばいいかな…



「は…ハンカチ君?」

「ハンカチ君起きてー!」


「っ…?」

「ハンカチ君って…俺の事?」

「あっ…ごめんなさい」

「いや全然いいんだけどさ!」


「もう福島着きますよ?」

「あっわざわざありがとう」

「…いつかまた会えたらいいですね!」

「そうですね…」

「それではまた」





「あのっ…」

「ハンカチいつか返しますね!」

「了解!」







そうして彼とは乗車口で別れた。

最後までいい人だったなあ
私にはこういう人が似合う気がする

克也とは正反対の彼。














******





日も暮れてすっかり夜になっていた。

あれから色々観光して足もくたくただ。




目の前には川崎旅館の文字。


此処が私の実家。





「やっと帰って来れた。」

ガララッ



「ようこそいらっしゃいませ。」
そこにいたのは長年働いていた従業員の方だった。



「多江おばさん私です。」



「あっ!舞ちゃん」

「あらどうしたの?」

「ちょっと息抜きに…」

「じゃあ女将さん呼んでくるわね」

「ありがとうございます」


あれから全然変わってない

私、帰ってきたんだ

心にのしかかる重りが一つ取れたような気がした。





「舞!あんた心配したよ…」




「ごめんね…お母さん」




「謝らないでよ…さっ家で待っててご飯持ってくるから。」


「うん。」








私の母と父は自宅の隣に莫大な借金をしてこの旅館を建てた。

母は女将兼経営者

父は料理長として

最初は従業員も2〜3人だったし

お客様もあまり来なかった。

けどだんだんお客様が増えてきて、従業員も2、30人ほどになった。


今は自宅が住み込みの従業員の寝泊まり場。



って言っても昨年まで多江おばさんしかいなかった






ガチャッ


「ただいま〜」


自宅は昔と何ら変わりは無かった。

少し涙が出そうになった。







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