献上

□Child days.
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何がどうしてこうなったかわからない。
寝屋の為に数日だけ自分の部屋になったここは就寝前と変わらぬ姿で佇んだまま。剣帯と共に置いた剣はベッドの横に。今日の分と出しておいた服は取り出した通り綺麗に折り畳まれて窓から差し込む朝日を浴びている。
そして睡魔に倒れる寸前まで弄んでいた音機関や工具諸々は枕の脇に。何一つ変わりはなかった。唯一変化していたのは己の身体。
別に手足が無くなったわけではない(そうであったなら冷静に周りなど見ていられるわけない)髪の毛が全て抜け落ちたわけでもない(まぁストレスでその可能性は大いにある)
身体的には問題ない(見た目的には大問題だ)が、かなり複雑。
「………」
目の前で手を振ってみる。感覚はあり、望み通りにしっかり動いた。
ぶかぶかになった服の下で。
「………」
ベッドから降りて、立ってみる。足先まで神経は正常のようで普段と変わりなく洗面台まで歩けた。
低くなった視線を除けば、なんら変わりない。
「………」
ふいに両手で頬をつねる。痛覚も異常なし。だが、そんな事を確認するためにつねったわけじゃない。
今度は平手で頬を叩いてみる。当然だが、痛みに対する涙で視界がぼやけたのみだった。

俺は夢オチと言うベタな展開を望んでいた。痛みにより目が覚めて悪夢から抜け出すように努めてみた。
しかし、結果としてヒリヒリと痛む頬にこれが現実だと痛切に突き付けられる。
信じられない。
だってこんな事、非現実的じゃないかっ。
子供のように小さくなった身体(というか子供そのものの身体だ)に幼さを増した顔で。“子供”らしかぬ、血の気の引いた真っ青な顔で、呆然と立ち尽くす子供の姿が鏡に写った。
(悪夢なら覚めてくれ…っ)
現実だ、諦めろ。
わかっていても現実逃避を続けていた。






Child Days.
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