献上

□惚気は日常
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「どうでもいいけどさ 惚気なら他所でやってほしいんだけど」
扉の隙間から様子を窺っていたシンクは愚痴を誰にともなくこぼす。
緊急だ。とヴァンに呼び出され、わけのわからぬままアリエッタと苺を買い占めさせられて、一体何の目的でと覗いて見れば、バカップルの姿。
踏んだりけったりもいいとこではないか。
こっちは汗水たらして(厳密に言えばたらさせられて)働いたと言うに、利益はなし。
「馬鹿じゃないの」
「仲が良くて羨ましい、です」
素直に簡潔に自身の感想を漏らすと(偶然)一緒に覗いていたアリエッタはズレた感想を述べた。
本当にこいつは自分より年上なのだろうか。疑惑の眼差しを向けるが、あいにくアリエッタは気付く事はなく、何?と首を傾げただけだった。

「シンク アリエッタ…何をしている?」
そこへ書類を片手に持ったリグレットが怪訝な顔をして声をかける(総長ともあろう奴の部屋を覗いていたら当たり前か)
「特に何も」
「ではそこをどけ」
「…ヴァン総長に用があるなら今はやめといた方がいいんじゃない」
ガイラルディアがいるよ。ささやかに忠告してやるとあからさまに苦い顔をしてまたか、と扉を見遣る。
戦闘能力・指揮力・人柄。あまつさえ、そこらの女性には負けないくらいの料理上手で申し分ない人材だと思うし、シンク自身一目置いている。だが。
時として、発作的に公衆の面前だと言うにいちゃつく癖がある(亡きホドの習慣だとでも言うのか)
彼女が手に持つ書類は今日中に終わらないだろうと言う事は誰の目から見ても明らか。
総長の執務室前で重いため息が二つ分響いた。





(いつまで、待たされるんだろうか…)
End.

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