献上

□恋の病に薬なし
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暖かな日が窓から差し込み、穏やかな午後。
陛下が大人しく公務を行ってくださってるのも一つの要因なのかもしれない。
(ってそんなことは今はどうでもいい)



「あのさ…目つぶってもらってもいいか?」
「えぇ かまいませんよ」
幸福そうに笑いながら(この男にしては珍しく)素直に瞼を下ろした。
色彩の強い赤は姿を隠し、白く綺麗な肌だけ残される。端正な顔を目の前にしてすでに胸の早鐘は鳴りっぱなし。
座っているジェイドの膝に跨がってその上に座るガイの目線は常より弱冠高い。
だから、いつもと違う。その事実を自覚して、動悸は早くなる一方だ。
「…いつまで待たせるつもりですか?」
「ぅあ゙…っと、ゴメン……」
(待たせてるつもりなんてなかったんだけど…)
彼が言うならそうなるのだろう。
と、言うことは。自分はまじまじと見つめすぎていたと言うこと?
(…無自覚に)
今度は顔から火が出そうだ。
痺れを切らしたのか、再度ジェイドから声が掛かる。間延びした声ではなく、はっきりと真面目な声で名を呼ばれた。
「私が好きすぎて、つい魅入ってしまう気持ちもよくわかりますが…」
「っちが、違うから…っ」
なら、早くなさいと目をつぶってるくせに何故わかるのか的確に顎を掴まれ引き寄せられる。
女性のようにぷっくりと厚い唇ではないけれど、形のいいそれが嫌にでも目に入った。
(腹を、括らないと)
そもそも何故こうなったかと言うとジェイドの発言にある。いや、今までの自分の行動が原因と言って過言ではない。
この男、ジェイド曰く俺からキスした事がないと休憩中に言い始めたのが全ての発端で。
そのせいで(というのは筋違いかもしれないが)せっかくのお茶はだいなしになってしまった。
(…てか、そんなの数えてたのかおっさん)
死霊使いと呼ばれてるくせに。鬼畜眼鏡のくせに。可愛いところがあるじゃないか。
「ガイ」
「わかってる」
なんて感動してる場合じゃなくてっ。
盛大に大きく息を吐いて、吸って落ち着かせる。これ以上待たせたらどうなるか、わかったもんじゃない。

(キスはしたいって思って、るさ)
ジェイドの肩に手を置いて顔を近づける。
(あんたは知らないんだ…)
無意識に力が入り、ジェイドの軍服にシワが走る。
(こっちはこんなにドキドキしてるってことに…っ)
吐息は、もうすぐそこ。
胸の動悸が弾けて内出血して死んでしまうのではないか。
甘くて熱くてちくちく痛くて。もう眩暈のように眼前はぐるぐるする。





好き…。

好きだよ。

好きなんだ。

好きなんだってばっ。

(…だから許してくれよっ)
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